ホンマタカシ ニュー・ドキュメンタリー
@東京オペラシティ アートギャラリー(東京・初台)
2011年04月10日

ホンマタカシという写真家。雑誌やポスターなどでよく目にするその彼の、個展というものに初めて行った。結論からいうと、素晴らしい。何が?という「点」ではなく、総じて形となった「ぼんやり」した全てが、何故かいい。こういう写真家が個人的には好きだ。

ぼんやりした日常のドキュメンタリー。写真という表現方法で、「事実」を切り抜くとき、ホンマ氏はただのドキュメンタリーに「ニュー」をつけた。「郊外」に着目し、没個性を嘆いたのはずいぶん前。そんな彼の着眼点に、カテゴリー分けされたすべてに見ることができる。

展覧会の構成は大きく6つに分けられる。

まず、一人の少女の日常・成長を追いかけた「Tokyo and My Daughter」。
どの写真も独特の表情、そして何より色味だ。中でも、茶色のペアルックのトレーナーを着た父娘が、台所で冷蔵庫を開けている写真。机に座った少女の表情もなんともクセになる良さだった。

そして、イタリアのラパッロという町に住む11人の未亡人を追いかけた「Widows」。
誰ものが「目」で語りかける。その語りかける目に真正面から向き合ってシャッターをおすホンマがいる。ランダムに11人が、時代背景もバラバラで出てくるので、全体を通して、ふ〜ん、となんだかわかったようなわからないような。

次は、個人的には一番好きなカテゴリーの「re-construction」。
もう一度組み立て直した「一冊の雑誌」が作品だ。会場内には段ボールが積まれ、その上に、表1も表4も真っ白な、まるで束見本のような雑誌が置かれている。それを各々が手に取り、ペラペラめくる。ホンマは、写真を発表する場として、雑誌や広告を積極的に、そして意識的に重視してきたという。そんな彼が、自分の作品をもう一度見直し、表紙を取り直し、そして組み立て直す。ただ独立した一枚の広告写真が、内容を重視して「無理に」飾った表紙の一枚が、こうして再編されると不思議なホンマワールドになる。試みも面白いな、と思う。

「M」。これは郊外を追い続ける彼のライフワークの一つのような。世界中にあるマクドナルドの「M」のマークが、ヘルシンキで、ハワイで、ニューヨークで、シャモニーで、ワシントンで、ミラノで、ロサンゼルスで、、、。街の中に溶け込みながらも、なぜか「同じ」に見え、それでもヘルシンキはやはり独特だし、シャモニーでは、窓に山脈が映り混んでいたりする。展示会では、それらの写真が、地面に並べられ、それを見下ろしながら歩く。なんだか、とても、よかった。

「Together: Wildlife Corridors in Los Angeles」と「Trails」は、ある取材に同行した様子を写し取った連作。前者はロサンゼルス郊外の野生動物の生態調査、後者は北海道・知床の斜里での鹿狩りのようす。どちらの写真にも、野生動物や鹿は出てこない。が、映り混んだ「風景」が、その横のキャプション文によってなるほどそう見えてしまう。

最後は、ショートホープに火を付ける映像作品「Short Hope」。ホンマ自身が敬愛する写真家・中平卓馬がマッチをこすり、暗がりの中で浮かび上がる様子を繰り返していた。


全体として、写真というものが見せることができることを「背伸びせずに」表現したというイメージがある。戦場も超自然現象もない、日常の写真。しかし、切り取られた一瞬一瞬の日常が独特の色によって、構図によって、そして写真の大きさによって特別になる「さすが感」。展示スペースの、空間とのバランスも非常によかった。

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