JAPAN SWIM 2010 観戦記
第86回日本選手権水泳競技大会 競泳競技大会
@東京辰巳国際水泳場
2010年04月16日
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東京メトロ有楽町線「辰巳」駅を降りて、歩道橋を渡ると桜並木の公園が続く。二週間前なら、すごく綺麗だっただろうな、と、この日は真冬並みの寒さ。もっと厚着してくれば良かったと後悔しつつ、代々木のオリンピックプールから、ここ辰巳の水泳場に場所を移したJAPAN SWIMを観戦する。中に入ると、室内温度の設定は25度。試合前に各選手がメインプールとお隣のサブプールで最後の調整をしていた。観客のほとんどは「関係者」といった感じで、競技場外に設営されたミズノやarenaなどの水着メーカーのブースは少し閑散としていた。

大会4日目。準決勝2種目(男女200m背泳ぎ)、決勝は5種目。男女200m自由形、男子1500m自由形。男女100mバタフライ。場内アナウンスやBGMなど、華やかさの演出は見えるが、あくまでも競技会というスタイル。プロスポーツを見に行く感覚ではない。それぞれの選手が、2年後のロンドンオリンピックまでの中間期、様々な調整やアピールの場としてとらえているのだろう。前々日、北島康介が復帰して、いきなり日本記録をマークするなど、注目度も確かに高い大会だ。競泳競技、日本最高峰というのも頷ける。午後7時から開始。まずは準決勝の2種目が行われる。選手が入場し、プールサイドで(わざわざ)ジャージを脱ぎ、スタートして、ゴールする。数分間の熾烈な闘い。そして、選手が退場して、また次の種目の選手が入場する。う〜ん、運動会?のような淡泊さで、どんどんプログラムが進行していく。

決勝になると、さすがに雰囲気は変わる。応援席からも歓声が大きくなる。「よ〜い」の合図で構え、「ドン」にあわせて会場から「うっ」というかけ声。そのままレースが進み、母親らしき声が、泳いでいる娘・息子らしき選手へ投げかけられる。ここで泳けるまで、何十年も努力してきたのだろう選手達の「晴れ舞台」。それを想像すると気持ちも自然と張り詰めてくる。

1500m。一往復して100mのプールを15往復する過酷な競技。優勝したのは現役高校生の選手だった。なるほど体力勝負なのかな、とも思った。最初から飛ばし、ずっとトップを守り続けたこの選手の泳ぎを見ていると、本当に無駄がない。なにしろ競泳観戦ド素人の私が始めに驚いたのが「飛び込みのスムーズ」さ。その次に、柔らかい身体の使い方で無駄なく進む「ソリッド」さ。そこに力強さが加わって、スイマーはなるほどあの体型になるわけだ、と関心していたり。そんなド素人の私にもわかるほどの無駄のない泳ぎで15往復。今期世界で3番目に速いタイムで圧倒の優勝をかっさらった。レース後のインタビューで「これからどんどん国際大会に出て結果を残したい」と語ったあたり、頼もしい限りだ。そして、次に注目すべきは男子200m自由形。この種目初エントリーの松田が力強い泳ぎで優勝した。ずっとビデオを回していた私は、ラスト50mの記録映像がブレにブレ、それだけ興奮していたんだなと、後になっても分かる。

男女ともにバタフライの決勝は特に面白かった。そもそもバタフライという泳ぎ方自体にも憧れる。水を掻き、そして蹴り、最終的には身体のくねりで進む。スポーツカー並の「静かさ」でクロールがスイスイ進むなら、バタフライは四輪駆動。力強さがたまらなく魅力だ。とはいえ、スピード競技である以上、バタバタやっているので決してなく、やっぱり「スイスイ」泳いでいるのだ。すごいな、と感嘆の声。特に男子は劇的なレース展開で、最後の最期、タッチの差で優勝が決まるという結果。後半の追い込みがグイグイきて、これはもうカメラなんて構えず見入ってしまった。

表彰台の一番上で誇らしげに手を掲げる勝者。それを追うライバル。「速く泳ぐ」ことにかけ、自分の身体を絞り上げ、水中を斬るように進むその姿に、なんというか、勝敗以上の厳しさを感じるし、だからこそ、ただただ見ているだけの私には、とてつもなくかっこよくうつった。