地雷を踏んだらサヨウナラ
ONE STEP ON A MINE, IT'S ALL OVER 1999年(日本)

監督:五十嵐匠 制作:奥山和由
原作:一ノ瀬泰造
出演:浅野忠信

“うまく撮れたら、東京まで持って帰ります。
もし、地雷を踏んだらサヨウナラ”

内戦の続いていたカンボジアの、クメールルージュの本拠地だった「アンコール・ワット」で、一人の青年カメラマンが死んだ。彼が、最後に残した言葉のように「地雷」を踏んでサヨウナラしたのかは分からない。が、カンボジアの地で最期を遂げたことは確認された。そんな一人の戦場カメラマンを描いた作品。この映画が好き、嫌いではなく、一ノ瀬泰造というカメラマン、彼の生き方を、もしかすると、その描き方が好きなのかもしれない。浅野忠信の好演が光る。

ロバート・キャパというカメラマンを思い出す。彼が最後にシャッターを切った一枚の写真。右に見える堤防。正面から左にかけて広がる草原。そのどこかで、彼もまたサヨウナラ、している。

今でこそ、テレビで即時に伝えられる戦場も、「誰かが伝えなければ」という使命感をもって足を踏み入れた三十年前。一ノ瀬泰造は、戦場においても、「笑顔」を好んで撮ったという。

映画の中で描かれる「現地の人」との交流や、別れや笑い。たぶんきっとこうだったのだろうと思わせるほど説得力のある作品に仕上がっている。「写真」を売るという行為と生活するということ。自分にできることと「お金」でできること。AとBの間にたって、両者を切り取り伝えること。感情が入り込む隙に見せる本音の部分。二十五歳の若者がもっていた使命や、伝えようとしたこと。はっきりしないところはそのままに淡々と映し出してくれる映画なので、見る側に判断が委ねられる。どこまでも前向きで、人間が好きだった一ノ瀬泰造という若者を理解すると、この「もし、地雷を踏んだらサヨウナラ」という言葉がよけいに胸にせまってくる。



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