MR. A-Z
Jason Mraz (2005年発売)

Life is Wonderful
Wordplay
Geek in the Pink
Did You Get My Message?
Mr. Curiosity
Clockwatching
Bella Luna
Plane
O. Lover
Please Don't Tell Her
Forecast
Song For a Friend

A to Z。こう聞いて、まず思い浮かんだロンドンの市街地図。ロンドンという街の混在、混沌、なんでも有りな感じ。MR。これをJason Mraz自身として、彼のA to Z。つまり全部彼で、全部の彼。言葉のもじり方が、さすがにうまい。

コーヒー農園からギター一本でのし上がったニューカマー。「The Remedy」の大ヒットと、その勢いで「You and I Both」などを含んだ1st アルバム「Waiting For My Rocket Come」の高評価。完成型とまで言われ、「一発屋」の匂いをプンプン漂わせていた。で、発売されたのが「Wordplay」。“しゃれ”とでも訳すのか。

I've been all around the world
I've been a new sensation
But it doesn't really matter in this g-g-generarion
The sophomore slump is an uphill battle
And someone said that ain't my scene
(世界中回って 新しい波を起こした
なのに、今の時代はそんなことどうでもよくて……
二枚目の重圧はかなりタフだよ
誰かが言うんだろ、あいつは終わった、なんて)

ヒットの後のスランプを軽快にもじる彼のセンスにあっぱれ。このアルバムでは2曲目に収録されており、なんとも心地よく耳に響いて、それがまた、かの「The Remedy」に似ているから、皮肉な奴だと思ってしまう。そんな聞く側を、ケラケラと笑って払いのけるかのような彼のスタイルが、ぼくは好きだ。

さてアルバム。まず、静かな始まりは、先述の「Wordplay」で"The Mr. A to Z they say is all about the wordplay"と言い切る【言葉職人】っぷりを見せつける。

It takes a night to make it dawn
It takes day to make you yawn brother
It takes some old to make you young
It takes some cold to know the sun
It takes the one to have the other

Life is wonderful
Life is goes full circle
Life is meaningful

歌詞カードのまま訳すと、「夜があってこそ夜明けは来る/一日あってこそ君は退屈する、なぁブラザー/老いた中でこそ若さが光る/凍えてこそ太陽の暖かさがわかる/「これ」があるからこそ「あれ」を知る」

ほんと人生って素晴らしいし意味がちゃんとある。めぐり巡る大きなサークルのでね、という感じか。

悲しみとか喪失とか犠牲とか涙とか怖れとか。そんなものもちゃんと意味がある人生の素晴らしさを歌った彼が、ピンクの服を着た変な奴(Geek in the Pink)を軽快にうたってしまうから、またいい。君を家に連れて帰って、一晩中愛し合うのさ……"Don't judge it by the color / Confuse it for another"


Mr.Curiosityという曲はせつない。ピアノだけで歌い上げる世界が、なんとも言いようのない、、、。つまり好奇心(Curiosity)が自分の中でコントロールを失いかける崩れかけた男。ネコを殺してしまった自分の好奇心を「愛」に。Mr. Waiting(まちぼうけ)はつらいよと。愛を探して、ミステリーな愛の中に迷って。恋をすれば盲目で、タイミングが合ってたことなんて決してなく・・・。だけど最低これだけは、せめてI tried、、と。う〜ん。

次の「Clockwatching」は、なんとなく彼自身を歌ったのかとも思える。直訳すると -決められた時間ばかり気にしつつそれでいて怠ける-といった感じ。
"No Jumping conclisions / I don't think there's no solution / Let's get backwards and forget our restless destination"
なるほどね、だ。このスピード社会で、これだけ青臭く言ってくれると、ふんふん、と頷いてしまう。

黄金の太陽に選ばれた神秘の月、ベラ。彼女への恋心を歌った「Bella Luna」、「君」のおかげで高く舞い上がれた僕は特別だった。そんな君とのサヨナラを歌った「Plane」、望んじゃいないだろう君へ、僕がまだ恋をしていることは言わないで欲しいと切なく歌う「Please Don't Tell Her」、君といっしょにいると、僕はクレイジーになるという予報、、、恋真っ最中を歌った「The forecast」などと続き、最後、Song For A Friendsが始まる。マイナーから始まり、どこか雨にも似て、静かに歌い始められる言葉は、「あいつ=友」がいってくれた僕への、、、アドバイスだったり、僻みだったり。でもとても大事な友達。ぐずぐずした自分への応援に友の声を変え、そんな友人への感謝の歌、だろう。


また、1曲目のLife is wonderfulが始まり、ふと、こんな一節を聞き取った。

It takes a thought to meke a word
It takes some words to make an action

なるほどね。最後までそう思わせるアルバムだ。ま、とにかくごちゃ混ぜの、色とりどりなリズムが心地良いという大前提があっての名盤だけど。そうそう、声も実にいいんだ、な。


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