こんなに「普通」に見えるのに、独特で強烈なのがドイグである所以か。
私自身、どこの美術館で、彼の何を見たのかは忘れたが
強烈に惹きつけられ、好きな画家、と自覚した覚えがある。

1959年にエジンバラに生まれ、カナダとカリブ海(トリニダード・トバコ)で
育った彼がロンドンで学び、それから《画家の中の画家》と呼ばれるまで。

ただ、ひと言、『欲しくなる絵』が多い。

コロナ禍の中で延期され続けなかなか見られない日もスパイスになり
来館日は大雨。

だけどそんなこと微塵も関係なしで
大型作品の並ぶ爽快な光景に酔いしれた。

まずは第1章、森の奥へ。
1986年〜2002年の作品が並ぶ。
パッと目を奪われたのは「天の川」。
星空に、木々が光るように緑なのが印象的。
祭りみたいな赤が印象的な「のまれる」
ベランダの仕切り壁がカラフルな「コンクリート・キャビンU」
往々にして人の肌や顔の色が映画「アバター」のような青だったりするが
「ブロッター」の薄紫、逆にうすピンクの「スキージャケット」。
ここに「カヌー=湖」と「エコー湖」がならぶ部屋が凄まじかった。
個人的には、「カヌー=湖」の緑がハッとしたし、カッパか?という緑の人。
気のような人が、絵を描いている「山の風景のなかの人物」
そして、夜空と燃えるような家と湖面の三層が見事な「ロードハウス」が好きだ。
今回の展覧会の顔となった作品「ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュベレ」。
オーロラのような夜空に、カラフルな石か貝殻の壁がグエル公園のような。

第2章 海辺で。2002年からの作品。
なんて静かで、写真では絶対にでない雰囲気なんだと。「ラペイルーズの壁」
のどかに「赤い船(想像の少年たち)」
「無題(バラミン)」はすごい。これまで2メートルほどの作品が続く中で
50p四方ぐらいの小さな作品。なのに、このインパクト。
一人で試合をする「ピンポン」は、
いくつかの作品で見られる直線的なタイルのような背景が印象的。

ブロックのような背景に目がいく「花の家(そこで会いましょう)」は
花の降る人の存在が見事で、やはり色んな時間空間を感じる。
青に緑、オレンジに黄色という色のコントラストが見事な「スピアフィッシング」
顔の色、配線、手の色、花の曲線に目をやりつつ、タイトルは「夜のスタジオ」

今回、最も惹きつけられ、大判プリントを買ってしまったほどの
「ポート・オブ・スペインの雨(ホワイトオーク)」。
動物園の飼われたライオンならではの箱形の黄色壁に緑窓、
なのに、飼育員の透明に比例して、ライオンが力強い。

対照的な作品として、同じ構図で書かれた肌色の濃淡、
「赤い男(カリプソを歌う)」(個人的にはこの作品に目を奪われた)
と、「水浴者(カリプソを歌う)」。
陽気な雰囲気の「音楽(二本の樹木)」
夜の海岸で寝転ぶ青い人たち「夜の水浴者たち」

第3章では、ドイグのスタジオでおこなっていた映画の上映会。
そのポスターが並ぶ。
「エレファント」、「気狂いピエロ」「東京物語」「座頭市」「HANA-BI」など。

大きな作品が多いので満足感が高く
だけど全体的には、はやり少し作品の数が少なめか、と。

もっと1つ1つずつを時間をかけて、もう一回、行ってみたいと
思わせる展覧会だ。












































































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Peter Doig
ピーター・ドイグ展
@東京国立近代美術館
2020年6月13日(土)