海に面した遊歩道

東京・豊洲にて

海のない街で育った。そんな個人的な理由もあってか、海の、それも穏やかな夕暮れ時の、街の中にある海沿い、海に面した遊歩道に佇むと、ホッとする。

目に見えないはずの自然が小さな波になって、はたまた音になって、一定のリズムで、永遠に思えるほどに繰り返し、どこまでも広く。一つひとつに何ら「特別な色」を持たない海の姿は、なのに特色があるというか。

すぐに思いつくのはブルックリンからマンハッタンを眺めたプロムナードだ。夕暮れになると、地下鉄にのってわざわざ行ったのを覚えている。もう一つはバルセロナにある海沿いの遊歩道。海の音を聞きながらぼんやりしていた。そして今は、東京の、埋め立て地の、だけど橋も高層ビルも見渡せて、羽田空港からの飛行機も飛んでくる豊洲の遊歩道。ぼんやりするには冬は寒いが、それでも眺めてしまう「何」かがある。