(ある夏の日に)

特に夏の暑い日、夕刻の庭はいい。風は昼間に比べるとずいぶん涼やかで、木の廊下から伝わるひんやりとした感覚が心地良い。人混みを避けて、ゆっくり腰を下ろす名もない庭園は、見ているだけでホッとする。例えばこれが「龍安寺」だとする。その中の宇宙ってなんだ、と堅くなる。ボーっとふにゃふにゃになりたい夕暮れには、やっぱりこちらのほうがいい。西日がやさしい。辺りには誰もいない。あまりにも静かで、今日最後の太陽がジワジワ燃えている音さえ聞こえる、かのようだったりする。
ホッとする自分自身の「昼間」が煩雑すぎるのかもしれない。打ち水で熱を取り、軒下に座って団扇であおぐ。そんなニッポンの原風景を知らない僕には、こうして、わざわざやって来る寺の、名もない庭園がその代わりなのである。

夕刻の庭