毎年同じことを記しているような気もするが、とにかく早い。一年が経つ時間が短い。そんなことを記しながら、「毎年同じことを」というのも、同じように記しているような気もして、今年一年のことが、去年か一昨年かはっきりしないことも多く。

そんな中で、今年一番印象に残っているのは野球の日本代表、侍ジャパンがワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で世界一に輝いたことだ。準決勝のメキシコ戦でのサヨナラ勝ちも、決勝戦、泥だらけのユニフォームでマウンドに立った大谷翔平がトラウトを三振にとって決めた優勝の瞬間も。

「優勝する」という結果を追い求めて、それを見事につかんだ侍たちには鳥肌が立つほどの感動をたくさんもらった。大谷翔平という、歴史に確実に残るスーパースターの活躍をリアルタイムで見られることの幸せをかみしめつつ。

さて。今年2023年は、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけがゴールデンウィーク明けの5月8日より「5類」にひきさげることが決まったこともあり、確実にコロナ明けの雰囲気となった。夏を中心に、ことごとく4年ぶりの開催というイベントが増えた。

1月。渋谷の東急百貨店の営業が終了し、全国高校サッカーでは、岡山学芸館が初となる全国制覇を達成。中高一貫の私立校の強さが光る中、公立高校の奮闘も目立つ大会となった。準決勝、決勝は、ついに聖地国立競技場に観客が戻ってきた。大雪の影響で関西方面の電車が大混乱になったのも、今年の出来事だったか。

2月。トルコとシリアの国境でマグニチュード7.8の大地震が発生し、多くの被害者がでた。情勢不安のシリアでは、世界中からの救助の手も入れず、実際にどれだけの被害が出たかは不明のまま。バイデン大統領は、ウクライナを電撃訪問。上野動物園のパンダ、シャンシャンが中国へ返還された。漫画家、松本零士さんの訃報も届いた。

3月。5月に行われる広島サミットを前に、岸田首相は慌ててキーウを訪問。中央集権の分散への一歩か、文化庁が霞が関から本拠地を京都府に移して業務を開始した。そしてWBCでの侍ジャパンの躍進。プロ野球開幕前から、野球の醍醐味を満喫した結果となった。大好きな作家、大江健三郎さんの訃報も届いた。

4月。大江健三郎さんに続いて、坂本龍一さんの訃報。YMOでの活躍や音楽プロデューサーとしての才能開花は世界のサカモトになった。個人的に印象深いのは、バルセロナオリンピックの開会式で指揮棒を振る姿だ。そして、ごっつええ感じ、罰ゲームで「シャーペン」をニューヨークまで取りに行く浜ちゃんに、玄関先で冷たくあしらう姿。考えてみれば、バブルだったんだな、と。春のセンバツ高校野球にも大歓声が戻ってきた。

5月。広島でサミットが開催され、主要7か国、核保有国のアメリカ、イギリス、フランスのトップも原爆慰霊碑の前に立った。ロシアに侵攻をうけるウクライナのゼレンスキー大統領も広島入りした。世界三大映画祭のカンヌで、役所広司さんが主演男優賞を受賞。

6月。パペポや探偵ナイトスクープで、知的な笑いを届けてくれ、スパッと芸能界を引退した上岡龍太郎さんの死。自衛隊では、隊員による発砲事件が起きた。LGBT理解増進法が成立し、性的マイノリティへの理解が進むと同時に、多くのドラマで同性愛が描かれるようになった。海底に沈むタイタニック号の見学のために潜水艦に乗り込んだ5名の死は大きなニュースになった。

7月。ビッグモーターの不祥事が社会問題化に。修理で請け負って、そこにわざと傷をつけて修理代をかさ増し(保険金)するというのが、組織的に行われてたとして大きな事件となった。近所にあったビッグモーターの店舗もガランとしていた。国道沿いの雑草は、除草剤できれいになっていたのも印象的だ。ロシアによるウクライナ侵攻からNATOの存在感は増し、インド太平洋との連携強化のための首脳会議が開かれた。

8月。悪質タックルで問題になった日大のアメフト部で、寮から覚せい剤と大麻が見つかり所持容疑で部員が逮捕された。大学側の隠ぺい体質が露呈し、社会的な問題となり、日大アメフト部の廃部へとつながる。そごう・西武でストが決行され、労働者と経営陣の対立構造が形となった。とにかく暑い夏だった。WHOはのちに、史上最も暑い夏になったことを発表する。そして、ジャニー喜多川氏による性加害が認定される。夏の甲子園大会では、慶応高校が全国制覇。丸刈りで根性を売りにしたような野球部のイメージを変えた。その後、高校生年代の世界大会でも、日本は念願の世界一に輝いた。

9月。ジャニーズ事務所の解体。ジャニーズという名前が消えることになる。このジャニー氏による性加害の認定からか、全国の中学や高校で、男性の教諭や部活の監督による男性部員への性加害が全国から寄せられるようになり、我慢を強いられてきた被害者の声が届くようになった。男子バスケ日本代表が自力でパリ五輪出場を決め、日本中にバスケ旋風が起こる。モロッコで、マグニチュード6.8の大地震が起こり、中東からアフリカにかけて地震の多さが目立つことになる。

10月。財津一郎さん、谷村新司さん、もんたよしのりさんと、次々と訃報が届く。イスラエルでは、ハマスとの報復合戦が激化し、被害者が多くなる。中国で開催されたアジア大会で、日本は金メダルを52個獲得する。大谷翔平は、メジャーリーグで日本人初の本塁打王に輝く。投手としても10勝を挙げる二刀流の活躍。最後に肘を故障して、途中離脱したが、それでも本塁打王に輝く活躍ぶり。1次リーグ敗退にはなったものの、ラグビー日本代表の雄姿は印象深い。

11月。1985年、バース、掛布、岡田のクリンナップなどで果たした日本一から38年、阪神タイガースが日本一に輝く。Jリーグではヴィッセル神戸が王者となり、関西圏がスポーツで沸く。ジャニーズに続いて宝塚歌劇団でも。25歳の団員の自殺を機に、過労やハラスメントなどが露呈。当たり前とか、周知の事実とか、あくまで噂などとして、あえて声にせずに見過ごしてきたことが露呈した一年だった。これまで日本一の高層ビルだった大阪のあべのハルカス(300m)を抜いて、麻布台ヒルズの中核、森JPタワー(330m)が日本一の高層ビルになった。

12月。夏から秋への移り変わりが感じづらいほど、いつまでも暑かった今年の気候も、ようやく冬らしくなり、秋を飛ばして一気に積雪に襲われる地域もあった。今年の漢字は「税」、新語・流行語は「アレ(A.R.E.)」に決まった。政界では自民党の裏金疑惑が毎日のように報道され、安倍一強時代からの派閥のしがらみの負の面が露呈する。岸田首相の支持率は下がり続け、それでも取って代わる者のいない現状。大臣・副大臣が一気に更迭される異常事態となった。去就が注目された大谷翔平がロサンゼルス・ドジャースに移籍。赤のエンゼルスから青のドジャースへ。入団会見は大注目され、日本時間の朝8時から、テレビはすべて生中継した。そこで、大谷は「勝ちへのこだわり」を口にする。そして、その大谷翔平のラブコールを受けて、本命のニューヨーク・ヤンキースを蹴って、日本球界ナンバー1投手、山本由伸もドジャーズ入りする。

今年も振り返ってみるといろいろあった。うれしいニュースの多かったスポーツ界、国内を中心に旅行機運も高まり、各地ではイベントが復活した。外国人の訪日観光客の数は、このところの円安も手づだってコロナ前と同水準となり、東京や京都・大阪など活気が戻った。

人が動き、交流して、お金を生むコト消費には、個人的にも価値があると考えるので、来年は、どんどんコトに消費しようと企む。



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2023
2023年12月28日