「スピードというものを視覚的に表現したかった。
車が高速で走れば、すべての輪郭線や色がほやけて
ひとつに溶け合うんだ。」 
アンディ・ウォーホル
アンディ・ウォーホル展 永遠の15分
2014年03月07日
森美術館

ミスター・ポップ・アート。国内史上最大の回顧展を謳うこちら。何かと話題を振りまいた六本木ヒルズにあって、毎回個性のある展覧会を行う森美術館。その10周年の記念展でもある。美術手帖は1000号という記念に、このウォーホルを特集していた。ウォーホルという人、確実になんか、ある。

入り口のエスカレーターの前。ウォーホル自身がペイントして世界に一台しかないBMWが展示されている。写真OKということで、ひとだかり。一見、迷彩柄?にも似た色の組み合わせは、走ったとき、意味を持つという。

館内入り口までとBMW以外の写真は、当展覧会のフライヤーよりスキャン。

敬虔なキリスト教徒の一面を、特に晩年は作品にも見せ始めたウォーホル。の、聖顔布になぞらえた晩年の自画像。

次に描きたいモノ。それに悩んだ彼の出した答え。一番好きなモノを書く。=お金。だからダラー。後に、親交を深めたバスキアとの合作(右)

売れに売れたウォーホルの「花」シリーズ

ピッツバーグで移民一家の末っ子として生まれたアンドリューは、非常に繊細だったと、晩年、一緒に暮らす母親が言う。ニューヨークに出て商業デザイナーとして活躍。この展覧会は、彼を「時代」で切って紹介していく。商業デザイナー時代の作品で目を引くのが、赤い靴と足。3枚の絵を貼り合わせるそのバランスが素晴らしい。他にも、ウォーホルは、「脚」のラインの描き方が上手だ。

作家として。日常的に身の回りにあったキャンベルスープ。当初は「描いた感」を出した作品だったが、結果、彼が行き着くのは「そのまま描く」こと。32種類のフレイバーを並べた最初の作品は、好評、とまではいかなかったようだ。

缶詰の缶を、そのまま描いただけ、といえば、そうだからだ。しかし実際にこれを見ると、それも32枚が壁に並んでると、一つの「作品」になっていたのは容易に想像できる。

マリリン・モンロー。スーパースターが睡眠薬の飲み過ぎで死に、彼女を題材にと選んだのが、後に彼の代名詞となる作品。色の組み合わせで何千通りも生まれる作風は、受注生産としてスーパースターを描くことになる。

彼の特徴を現す事柄は多いが、中でも「ファクトリー」というのは、一番特徴を現している。

大量に、機械的に生み出す作品。多量に生産して消費する社会で、「アート」をファクトリーから生み出す。銀色に塗った工場で、多くのアシスタントによって色づけされ、時には実母が文字を描いてできていく作品。

彼は、アーティストなのか。そんな永遠の疑問も浮かぶ。

映画監督であるのは確かだ。当展覧会でも、スリープやエンパイアステートビルなどが上映されていた。プロデューサーであることも間違いない。

展覧会の途中で流されていた1983年のTDKのテレビコマーシャル。グンジョウイロ〜、というのが印象的な映像を見ながら、ウォーホルが、ダリや岡本太郎的な「奇抜な存在」として日本の中に受け容れられたことが正とすると、これはまさしく「アーティスト」なのではないかと、個人的な回答に至った訳で。

「銀の雲」というインスタレーション。この展覧会で随一の作品だった。というのも、銀色の風船がぷかぷかと浮いて、そして、眼前には全面窓から東京の風景が一望できるのだ。

色と形とフォルム。一つひとつがアンディ・ウォーホルというテープが貼られて、そのまま世に持ち帰られるという印象が、全体を見終わって強烈に感じる。そういう意味で、彼は確実に一つのアーティストで、ひとつのアートだと思う。



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