ビートたけしという一人の青年が、芸人になるまでの青春ストーリー。幻の浅草芸人と呼ばれたビートたけしの師匠、深見千三郎と過ごしたフランス座での日々。
「笑われるんじゃない、笑わせるんだ」「芸人だよ、バカヤロー」。
女の裸を見に来る客に、歌もお笑いもいらない、時代は漫才にテレビという時代の流れ。それにあらがう芸人魂のような意地。ビートたけしは、だからタップダンスができるのか、という合点もいった。
映画は、Netflixで2021年12月9日から配信された。柳楽優弥のたけし度が素晴らしく、大泉洋との掛け合いも絶妙だった。もちろん、ビートきよし役の土屋伸之も。中でも鈴木保奈美が演じた芸人の妻という像に、この映画のピーク点があるようにも思える。
ビートたけしの若き日々という圧倒的な背景を持つストーリーは、それに頼ることなく、
見事に、湿気を帯びた映像美によって再現
されていたように思える。お笑いをぶっ壊すという工学部出身の若者が、テレビではねて、栄光の道を歩むまで。
師匠のやさしさ、その師匠を支える妻の思い、その師匠を裏切る形になり、それでもこずかいをはにかみながら渡し、
鯨屋
で大うけし、そして。ザ・昭和ムービーであると同時に、喉がカラカラで、とにかく何かが飲みたくなるような展開に、これからの未来の映画のようでもあると思えた。
ビートたけしが作詞し、歌う「浅草キッド」の世界観。
♪ 同じ背広を初めて買って
同じ語りの蝶タイ作り
同じ靴まで買う金はなく
いつも笑いのネタにした
いつか売れると信じてた
客が二人の演芸場で
深見は、たばこの火の不始末で命を落とす。それをビートたけしは、「葬儀屋が、半分燃えてたから、安くしてくれた」と、泣く。
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浅草キッド
2021年(日本)
監督:劇団ひとり
原作:ビートたけし
脚本:劇団ひとり
出演:大泉洋、柳楽優弥、門脇麦、土屋伸之、
鈴木保奈美他