天丼 1500円
浅草、下町、江戸っ子、しちや、しゃらくせぇ。シュッとした恵比寿や代官山をTOKYOとするなら、ここは「とーきょー」。もう一つの顔だな、と思う。京都生まれ・育ちのぼくから見て、なんとも魅力なのは「しと(人)」がいいってことで、荒くてガサつなんて言ってしまうほど「距離」が遠くなくて。外国人が惹きつけられるのも、浅草寺や土産の日本刀・着物のためじゃなくて、なんというか、ここにある温度なんだろうな、なんて思う。
隅田川を水上バスで遊覧する大量の観光客と、でっかい金の雲?のオブジェ(アサヒビール本社)を左手に見て雷門まで移動。人力車、人力車の列。真っ黒に日焼けしたお兄さん・お姉さんは、英語も話せてしまうんですね。京都に本社を置く人力車の会社は、ここ東京でも「のり・つっこみ」が旨く、赤い座席の上で欧米人がギャハハと笑っていたりする。仲見世商店街は青空通り。人形焼きが無性にいい匂いだ。一本外れた露地で子供がバトミントンをしていた。そこを老人が通りかかり、目の前にポトンと落ちた羽を拾う。伝法院通りの店は魅力的な「一品モノ」が多く、入り組んだ商店街の中でも一、二を争うかな。浅草寺までたどり着いて、煙を身体の悪い部分にこすりつけるまで、相当の時間がかかったりする。天井に描かれた「龍」が気に入った。鳩ぽっぽもいい。
浅草寺から左に折れて、浅草温泉を通り過ぎると、昔ながらの「氷屋」がある(といってもぼくの子供時代にはもうなかったけど)。花やしき遊園地からはキャーとかワーとか。そんな絶叫マシーン、あったっけ?
グルグル入り組んだ露地を行く。店の前で「おばさん」が、「よってってよ〜」と粘っこい声で客引きをしたかと思うと、ここは大阪の新世界か?はたまたバンコクのカオサンか?と思うような屋台街。「ポッピー」ののぼりが目立つ。屋台に座ってジョッキを傾ける老若男女。
いいな、とほんとに思う。
腹が減った夕刻。屋台に座って旨そうに飲んでる人たちを横目で見ながら浅草公会堂の近くにある大黒屋天麩羅へ。もう、「真っ黒の天丼」にも慣れてきたぼくは、発祥だか本場だか、そんな風に言われる浅草の天丼に舌鼓。歩きまわった身体に瓶ビールが染みこんだあと、上蓋から飛び出した海老のしっぽと、なんだかプリプリの海老がゴロゴロするかき揚げ、キスにししとう、ボリュームたっぷりのどんぶりが「ドン」と置かれる。二階の座敷は、さながら昔ながらの「食べ物屋」だ。京都で言えば、大原とか嵐山とか、そういうところでよく見るタイプの造り。味は、確かに旨い。けど、あまりにもの空腹だったので、余所との比較は出来ない。
陽も長くなった夏の始まり。こんな下町風情に触れて浴びる風は、ジトッとしていたが、心地よかった。