岡本太郎という芸術家の
ずっと後輩、
書家・柿沼氏からの
「挑戦状」には
書の力を感じる。
化け文字
〜書家・柿沼康二の挑戦状〜
@岡本太郎記念館(東京・南青山)
2011年02月12日
「尊敬とは、追従でなく対決である」
岡本太郎という芸術家が生まれて今年で100年。それを記念したイベントや展覧会が数多く企画される日本を代表する大芸術家だ。楽しい作品、爆発し突き抜けた表現。どれをとっても、この芸術家に「NO」を突き付ける人はいないのではないだろうか。そんな芸術家を「尊敬」する書家・柿沼康二氏。彼もまた、北野武をはじめ、多くの者の中に強烈な印象を残す芸術家だ。自身曰く「若干40歳」。あの太陽の塔と同じ年だ。そんな柿沼氏が、尊敬をこめた「対決。挑戦状」。岡本太郎が残した「書」に、書家として真っ向から立ち向かっている。圧巻は、会場入り口にある「太」という書。大きな岡本太郎の顔面の写真にl、一気に書き上げた「太」という字は、はねた墨、飛び散った気持ち、塗りつぶしたアートが見ている側に迫ってくる。
岡本太郎は生前、多くの「書」を残している。
書は絵である。
そんな岡本の書は動きが多彩だ。そして、色彩も豊富だ。
「旅」という書は、緑の絵の具が風のように描かれ、その中で「足」をもっているかのような「旅」という字が歩いているように見える。
伝統書から超大筆によるパフォーマンスまで幅広い活躍をみせる柿沼康二氏は、そんな岡本太郎の後を追うようで独自の世界をもっている。闘いという「ほとばしり」は、太陽の塔の模型の足元に積み上げられた「失敗作」の山でわかる。周りには、模写したような作品がいくつも並び、中央に、「風林火山」という作品がある。この作品を見たとき、書家・柿沼氏が行き着いた「絵」をみたような気がした。
書いて書いて書いて書いて。爆発する芸術に立ち向かう勢い。整然と並べられた「書道」では感じることのできないアートが、なんだか見ていて楽しかった。そして、改めて、岡本太郎という芸術家のすごさを感じることにもなった。それは、こんなにも「書家」を突き動かす圧倒的な爆発力に、だ。