ル・コルビュジエという建築家の原点をみるシャルル=エドゥアール・ジャンヌレ時代の絵画展、ピュリスムの時代を生きた彼の足跡をたどるような構成で展開される。

まず、この東京唯一の世界文化遺産、西洋美術館の空間でコルビュジエを見るという貴重な体験がとても気持ち良い。何度訪れても、この空間のバランス、高さ、広さ、光の加減が素晴らしい。まず、コルビュジエは、幾何学的な秩序に従って、静物を描き、重なりを透明で示し、二次元、三次元と次元を「増やして」平面で表現した。彼が「自分の最初の絵」と称する作品「暖炉」や、色も形もシンプルで、なのに陰影があるので質感がたまらない「シストロンの城壁」が目にとまる。同時代の画家達の作品も展開されるのが今回の展覧会の特長。アメデ・オザンファンの「カラフ、あるいは瓶」はシンボリックでデザインが好きな一枚。シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(コルビュジエ)のものとしては、質感まで出ている「白い枕」、線がぶれて絵画的になってきた「積み重ねた皿のある、ブルターニュ風景の前の静物」。

キュビズムとの対峙として、パブロ・ピカソの作品も並ぶ。圧倒的なパワーを持つ「帽子の男」「静物」、レモンや魚、この世界感がすごい「魚、瓶、コンポート皿(小さなキッチン)」、フアン・グリスの「果物皿と新聞」は色も構図も大好き、ジャック・リプシッツは、計ったようなバランスで彫刻を表現している。そして、ここで、私はまた1人大好きなアーティストに出会うことができた。フェルナン・レジェ。この有名であろう彼の作品とは、これまで何度も出会っているのに、これほど刺さったことはなかった。この日、この展覧会では、レジェが私の心をぐっとつかんだ。こういう出会いがあるからアート展は止められない。そのレジェ。「2人の女」「ピュリスム的コンポジション」でいちころになった。ピュリスムの頂点と終幕というコーナーに展示されたフェルナン・レジェの作品は「横顔のあるコンポジション」と「女と花」。この2つの作品の並びが素晴らしかった。

これまでの幾何学的な秩序で絵を描いてきたシャルル=エドゥアール・ジャンヌレが、建築を始め、ル・コルビュジエとして活動をする中で、人間と支援との調和を表現するようになる。この変化は如実にわかる。ル・コルビュジエとサインしてる作品が、個人的には好きだ。それまで黄金比とされる点と点の間の線の長さを決め、真っ直ぐの線、曲線も計られたようなものだった。それが、人を描き、線が乱れ、とても柔らかく、どこかリアルで。「灯台のそばの昼食」という作品は名作だ。一気に温度感をもった作品になっている。それまでは機械的に表現されていたものが、とても手書き的というか。そして「サーカス 女性と蹄鉄」では、絵として、それもコルビュジエが、かれらしい手法でしっかりと「絵」にしたという点で、この晩年の一枚が素晴らしい。最後の最後、「レア」を眺めながら、建築家の彼の絵画の時代は、なるほど一直線に繋がるものだったのかと知れて、後にする西洋美術館のピロティが、やはり美しかった。



▼フライヤー裏面より












珍しい、世界遺産の美術館ということと

東京で唯一の世界文化遺産。




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国立西洋美術館開館60周年記念
ル・コルビュジエ
絵画から建築へ―ピュリスムの時代

@国立西洋美術館
2019年2月21日(木)