続いて「LOVERS」。これはダムタイプの中心的人物、古橋悌二の遺作。ソロ作品である。文字が上下に流れ、真ん中に立つと浮遊感が増す。少し、気分が悪くなる。そのまま大きな画面に映し出されるビデオインタレーション作品「MEMORANDUM
OR VOYAGE」へ。ダムタイプの過去の作品「OR」「memorandum」「Voyage」からシーンをピックアップして再編成されたもの。生と死の境界線、16人のメンバーの記憶、そしてダーウィンの『ビーグル号更改期』の地図とテキスト。3つの繋がりが、不思議とどれも見入ってしまうものになっている。映し出される映像と、その繰り返しと一本のレーザー光線と、柔らかい音と。なんといえば良いのか、これをぼんやり見ていると、とにかく格好いい。そして心地よい。訳はまったく分からないがとても面白い。そして、恐らく(いや確実に)、見た直後の今より、数年、数十年経った方が味わい深く記憶にこびりついている。そんな作品だ。
「Trace-16」「pH」を経て、最後の「LOVE / SEX / DEATH / MONEY / LIFE」。これはおもしろかった。空間を作り出す装置としても、一枚の絵画のような作品としてもそして、一本の蛍光灯が移動し、床に映し出す短いテキストを追いかけていく暗がりという客観的な箱としても、とてもおもしろかった。舞台の装置としても使われたこれは、この世界観でダンスするという表現が、より広がりをもつだろう。愛の形は多様で、性、死、富、暮らし、もしくは命。これらのものすごく複雑でややこしく、表現をしようとしたら無限なものを、たった1つの単語で繰り返し投影して、そこを漂う「私」のように、蛍光灯のバーは一定間隔で行って戻って。人生。生きていくということが、なぜだか、はっきりと、ぼんやり想像できた。