思えば、18年前、2002年9月7日、当時私はまだ関西にいて、大阪のシアタードラマシティで行われたダムタイプのパフォーマンス『Voyage』をみたことを思い出す。当時のスケジュールソフトからダムタイプを検索して、改めて18年も前のことだと知り、なのに、ダムタイプという名前、そこで見たパフォーマンスを鮮明に覚えていることに驚く。言葉を使わず伝えるパフォーマンスは、見たときのインパクトよりも、見終わって時間が経ってから熟成してこびりついてくる、というような感じだ。それがこのパフォーマンス集団、ダムタイプと言えるかも知れない。さて、今回の展覧会。これまでの表現、パフォーマンスを創り出した空間を再現している。インスタレーションで空間を丸ごと演出する作品の数々は、その場に立って見ないと見えないものがあり、それに気付いたところで言語化して「こういうこと」とは言えない感情が揺さぶられる。まずは「Playback」。レコード盤を模した透明のアクリル板が開展して、12台のそれらがバラバラに、一定間隔で光って音がなる。再生される音は1977年のNASAによる惑星探査機ボイジャーに搭載したレコードに記録された55種類の限度の挨拶。パリのポンピドゥーでは12台だったターンテーブルが、本展では16台にバージョンアップされている。

続いて「LOVERS」。これはダムタイプの中心的人物、古橋悌二の遺作。ソロ作品である。文字が上下に流れ、真ん中に立つと浮遊感が増す。少し、気分が悪くなる。そのまま大きな画面に映し出されるビデオインタレーション作品「MEMORANDUM OR VOYAGE」へ。ダムタイプの過去の作品「OR」「memorandum」「Voyage」からシーンをピックアップして再編成されたもの。生と死の境界線、16人のメンバーの記憶、そしてダーウィンの『ビーグル号更改期』の地図とテキスト。3つの繋がりが、不思議とどれも見入ってしまうものになっている。映し出される映像と、その繰り返しと一本のレーザー光線と、柔らかい音と。なんといえば良いのか、これをぼんやり見ていると、とにかく格好いい。そして心地よい。訳はまったく分からないがとても面白い。そして、恐らく(いや確実に)、見た直後の今より、数年、数十年経った方が味わい深く記憶にこびりついている。そんな作品だ。

「Trace-16」「pH」を経て、最後の「LOVE / SEX / DEATH / MONEY / LIFE」。これはおもしろかった。空間を作り出す装置としても、一枚の絵画のような作品としてもそして、一本の蛍光灯が移動し、床に映し出す短いテキストを追いかけていく暗がりという客観的な箱としても、とてもおもしろかった。舞台の装置としても使われたこれは、この世界観でダンスするという表現が、より広がりをもつだろう。愛の形は多様で、性、死、富、暮らし、もしくは命。これらのものすごく複雑でややこしく、表現をしようとしたら無限なものを、たった1つの単語で繰り返し投影して、そこを漂う「私」のように、蛍光灯のバーは一定間隔で行って戻って。人生。生きていくということが、なぜだか、はっきりと、ぼんやり想像できた。






















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DUMB TYPE ACTIONS+REFLECTIONS
ダムタイプ|アクション+リフレクション
@東京都現代美術館
2020年2月7日(金)