グラミー賞ではお馴染みになったイギリスのシンガーソングライター。ポップミュージックの申し子のような彼の音楽は、それでいて多様。いくつもの音が重なり、それに負けない圧倒的なボーカル(とても気持ちいい音域)。聞いていると、気持ちがいいというのが第一印象だ。
アルバム「+」では、あか抜けない青年が、ギターのテクニックと旋律の良さで惹きつけ、それを完成させた?ようなセカンドアルバム「x(マルティプライ)」では、【らしさ】が出てきた(同時に、私ははまった)。
そして、この作品。タス(+)、カケル(×)の次のワル(÷)。アルバムの発表前からシングルで発表した「Shape of You」が世界中で大ヒットし、もうイントロの機械音を聞いただけで、気分が跳ねる。歌がうまい、という日本人シンガーも、こぞって歌った難曲にして、これを生で、ギター1本をかかえてステージに建つエド・シーランから聞いたら失神するだろうな、とも思う。
他にも、アルバムを構成する一曲一曲が、粒の大きいものばかりという印象を与え、ついついポップ感もいいが、もっと生の感じを聞きたくてアコースティックバージョンをダウンロードしたりもする。特に、「Castle on the Hill」は、オリジナルとアコースティックバージョンでは趣が全く違い、どちらもおいしい。煮ても焼いてもおいしい素材というような楽曲だ。
とにかくこのアルバムの世界にダイブして、染み込んでくる時間が、心地いい。大好きなアルバムとなった。ちなみに、第60回グラミー賞、最優秀トラディショナル・ポップ・ボーカル・アルバム。
分解してみていくと、1曲目の「Eraser」。ツアーコンサートの始まりの曲と同じく、これからどんな世界が待ってるの?とわくわくさせる曲で、これを聞くと始まるな、と思う。そのままの勢いで「Castle on the Hill」へと続き、「Dive」で第一の幕が下りる。なんと、ポップな。弾けている。
そして、大ヒット曲の「Shape of You」は何度聞いても名曲だ。私は勝手に、ここをアコースティックバージョンに変えて聞いている。続いて「Perfect」まで、良質の落ち着きと、品のいいポップスに酔いしれる。と、ここでガツンと「Galway Girl」。駆け抜ける音と声。ぶつかりあう様々なものが一級品だ。その余韻を引きづりつつ「Happier」「New Man」「Hearts Don't Break Around Here」。あ〜幸せ、と余韻の残る赤ワインの後のよう。
次の「What Do I Know?」は、最初は普通の曲だと思っていたが、歌詞をじっくり味わい、そして、何度も繰り返して聞くと大好きな一曲になった。「How Would You Feel (Paean)」へと続き、ラストの曲。
これは、とにかくタイトルが好きだ。「Supermarket Flowers」。非日常を日常にした花は、同時に価値を上げたようにも思われ、だけどきれいさは変わらない。ここでアルバムが終了するオリジナル盤が、やっぱり好きだ。特別版になると、この後も続き、それはそれでもちろんいいが、この曲でスパッと終わるのが、個人的には好きだ。
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