FIRE DOG
斉藤和義 (1996年発売)

FIRE DOG
砂漠に赤い花
男よ それが正常だ!!
何処へ行こう
僕は眠い
空に星が綺麗〜悲しき吉祥寺〜
大丈夫

あの高い場所へ
老人の歌
通りに立てば(飛ばすぜ!宮ニィ)

「いろんな事があるけど 空には星が綺麗」
もう12年前になるのかと思うほど、このアルバムに古さは感じない。
ちょうど「歩いて帰ろう」がポンキッキーで有名になり、斉藤和義という存在を知ったぼくは、ライブを聴く機会なんかもあってこの「脱力感」にホッとしたのを覚えている。当時、95年は誰も彼も思いきり歌い、そして踊り、、、とにかく派手だったから。野太い声で存在感バリバリの山崎まさよしとも違う、しゃがれ声でクールに決めてしまうスガシカオとも違う、なんというかひょろっとした感じ。

「口笛吹いて歩こう 肩落としている友よ
いろんな事があるけど 空には星が綺麗」

スーッと心の中に入ってくる。この歌が吉祥寺で書かれたのかどうかは知らないが、先日、ぼくは吉祥寺に住む友人の部屋から真夜中にコンビニへ向い、その途中でふと「あ、ほんまに星、綺麗かも」と思った。「ま、綺麗だからいいっか」ってね。大好きな世界観だ。

同じく、「大丈夫」にもそれは言える。
「ずっと遠くまで見渡せる丘に上ろう」
「大丈夫、なるようになるのさ
構わず行こう 思いのまま」


さて、曲を順に追っていくとしよう。
まず、壁かけテレビに映っているドッグフードに向かい、繋がれてる鎖を切って飛び込んでいこうとする「FIRE DOG」から始まる。これは、なんとなく地方で育った高3の、テレビでよく見る東京へのあこがれのような世界を歌う。

「砂漠に赤い花」は自分の中の「ふたり」を歌い、
「月も飛ばされる嵐の夜
赤い花が風に揺れている
誰にも恋していないときは
休みなさい そして忘れなさい」
名曲です。

名曲といえば、次の「何処へ行こう」ということになるのか。
「明日の行く先を僕等は考える
誰もが誰よりも一番悩んでる
偉い人たちは賢く光の中を泳ぐ
そしてまた忘れてしまう」

詩が素晴らしいです。

眠たい現実を、それを分かってくれない「世間」に、おいおいと呆れつつ歌う「僕は眠い」、桜の木にもたれかかり 長い夢を見ている様子をのんびりと歌いあげる「桜」、「それなりにいつも そこそこの日々はあるけど 体中が震える出来事は 少なくなるな そうゆうもんさ〈涙〉」と、年月積もって、まだ回顧にどっぷり浸かれない時期、壮年?を歌った「老人の歌」など、詩の世界に吸い込まれるのは、彼の声と歌い方も大きく作用しているような気がする。

で、ぼくが一番好きな曲、「あの高い場所へ」。

「頭の中の素晴らしい世界
回り続ける太陽が笑ってる」

「負けない僕に会わせて
足りない頭もしぼるから
目を閉じずに夢見れた
あの高い場所へ行きたい」


そして最後は、ブンブンとバイクが発車して、真っ赤なシャツで固めた「自分」の弱み。裸になって勝負しようというメッセージを持った「通りに立てば」。


……待つこと数分。静かにシークレットトラックが始まる。
「さよなら みんな ありがとう 君は 綺麗」と最後のチャン、でほんとに終わり。ジャケットの Goodbye Everybody Thank you You are beautiful の意味がここで分かる。


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