FRANCE 24
2006年12月23日
CNN、BBC。これらがアメリカやイギリスの放送局だということはなんとなく分かる。そして、これらのチャンネルが衛星放送で、いわゆる国際ニュース放送局だということも。CNNはアメリカだから、そりゃアメリカよりだよとか、言ってもBBCはイギリスだからね、そういう意見になるだろうなんて、本来あってはならないはずだが、やはりそういう「視点」が否めない。この2つを「アングロ・サクソン」と一括りにして、それとは違う視点で報道すると謳うのが、フランス版の国際ニュース放送局「FRANCE 24」だ(ル・モンド紙参照)。今月12月6日に開局した。

イギリスとアメリカ、に対してフランスの視点?分かりやすいのがイラク戦争開戦への賛否。まだ勢いのあったシラク大統領が断固反対した。結果、ドイツと一緒になってEUの2大国がイラク戦争を反対し、その年フランスで行われたサミットでは、ブッシュ大統領がサミット期間中にもかかわらず途中で中東へ飛び立ったなんて一幕もあった。国際会議で出会っても、形だけの握手しかしない、、、とか。
その、シラク大統領が是が非でも作りたかったのがこの放送局だ。今や…次期大統領の話題でもちきりのフランス。少々、間が悪かったか。それを思わせるのが、年間予算8,600万ユーロという低さ。

とはいえ、発信地は少ないより多い方がいい。ニュースは、同じ三次元の空間で起こっても、それをどう捕らえ、どう伝えるかで大きく趣がかわる。そもそも、何をピックアップするかという点だけでも、少ないより発信地は多いにこしたことはない。これから「詰まった報道」を期待したいものである。

そもそも国際ニュース放送局とはなにか。世界各地の衛星放送などで試聴できるというのが大前提。そして、24時間ニュースを専門に放送する。始まりは1980年、アメリカ・アトランタでCNNが開局。それから四半世紀、世界各地でニュース専門チャンネルというのが存在する。2004年のNHK放送文化研究所の報告によると、主要なものだけで15の国と地域にわたり、その数は30を超えるという。「こんなにある」という体で記されるが、国連加盟国だけでも192カ国あり、地域や民族などを考えると、30の放送局ではどうだろう。

テロ後の世界情勢の中で、中東を伝えるニュースがいつも引っかかっていた。どうも一方的だったような気がしてならなかったのだ。例えば、WTCの崩壊映像を見て、少年がバンザイをしている映像を流すにしても、とても特異に、どこか奇妙に見える映し方(編集方法も含め)をする。確かに、アメリカよりな日本の現状、あのテロは怒り以外のなにものでもない。が、「もう一方」の視点として流す映像にしては、あの「バンザイ少年」の映像はおかしいと首を傾げてしまう。そんな時、カタールというイスラム圏の、アル・ジャジーラが伝える報道は新鮮にうつった。確かに色々言われている。アルカイダの広告塔だとか、中東よりの報道が多いとか。それでもぼくは、この放送局の存在を知ったことで、やはり発信する「視点」は多い方がいいと再認識したのだ。なぜなら、両方を見た上で判断できるから。ただ、「〜らしい」とか、「きっと〜だろう」という、相手の立場に立ってモノを見たのではなく、あっち側にいる人からの声、映像だから。

今年1月、中国と並んで未来の超大国と言われるインドで、Times Nowという大型のニュース専門24時間衛生チャンネルが誕生した。中国において何でも自由に報道するというのが「無理」な現状、これは一つの「視点」として注目される。また、アル・ジャジーラも英語版の放送「アル・ジャジーラ・イングリッシュ」を最近開局したばかり。多くの視点が、世界中に発信されるという、ぼくからすれば良い方向へと世界が動いている。

ふとNHKを思う。確か、今年の初め、世界に向けたニュース専門チャンネルを!というような「期待」が小泉元首相の口から発せられた記憶がある。もっといえば、2、3年前からNHKのニュース専門チャンネルは構想にのぼっている。なのに・・・、不祥事に次ぐ不祥事。受信料の不払い。果ては、国営放送ながら、まるでスポンサーでも気にしているのではないかと思われる「視聴率至上主義」的な番組作り。なんじゃ、こりゃ?なことが多い。自然、そんなニュース専門チャンネル構想も頓挫している。

とはいえ、NHKはどう違うのかまったく分からない「同じような」チャンネルを、テレビ・ラジオ合わせて8つも持っている。持っているのはNHKで、そこにお金を払っているのが国民だから、国民が持っているのだが、その価値が見出せないのでイライラいている、ということを本当にNHKは分かっているのかと思う。

義務ではないが受信料は国民に科せられ、それを払わないと催促、それにも従わないと裁判に訴えるという前代未聞のNHKの姿勢。

NHKなんか見ないから受信料は払わないという人がいて、そういう気持ちが全く分からないわけでもない。が、その不払いの人にそれ以上NHKをどうのこうの言う権利はない。
ぼくはNHKの受信料を払っている。だから言わせてもらうと、チャンネル数は多いし、有益な番組が少ない。はっきり言うと、つまらない。大自然を追えばいいというものでもないし、速報性でも、インターネットと変わらない。キャスティングも番組のセットもタイトルも、なんとなく惹かれない。ラジオで政府主導の放送(主に北朝鮮に向けて発信する)をする、しないの論争の前に、もっとしなければいけない論争。そんなチャンネルいるか?という現実的問題。云々いろいろあるが、ま、いいか。

もし、今のままNHKが24時間のニュース専門チャンネルを作るといっても、多くの賛同は得られないような気がする。9つめのチャンネルだから。なら、海外のスポーツ試合ばかり再放送したりしないで、どれか一つのチャンネルをニュース専門チャンネルにすればいいのに、と以前のぼくは簡単に考えていた。が、ここにきて「過信」していたことに気付いた。あ、そのノウハウがないのか?と。

で、あれば寂しいし、ぼくも受信料を払いたくなくなる。そうじゃないよ鈴木くん、という意味でも、日本の、アジアの、視点にたったニュースの切り口で、「嘘」のない、「やらせ」のない、有益な放送を、NHKさん、と、お願いしたいところだ。



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