藤原新也 『書行無常展』
@3331Arts Chiyoda
2011年11月23日

藤原新也の「書」。それは言葉である。その言葉は、生まれた場所がありその場所で絞り出される。すなわち、書行。作家は「現場」という。例えば、原発の福島。例えば、中国の村、例えば東日本大震災の東北。東京、秋葉原。そしてインド。その言葉が絞り出された場所で、書き直し無しの一発勝負の「書」。藤原氏曰く、8割が失敗作らしい。失敗だらけなのは現実は、と続く。そして、「私は失敗作を人目にさらす覚悟ができている」と作家は言う。

それほど広いスペースではない。入場料も500円だ。そもそもこれは集英社から発売中の同タイトル本の、その個展だ。その場所で書いた文字が、その場の風景に溶け込んだ写真となる。写真と言葉と書。この「本」も値打ちは十分だ。

展覧会は大きく6つのスペースに別れている。まず「中国」。上海万博閉幕当日のメインゲートで書いた書や、桂林などの壮大な景色の中で言葉を紡ぐ。
次に日本。ネットアイドルや人間書道、雪原に描く「春」など。その後、印度ではガンジスに書を流していたり、人は犬に食われるほどに自由だという書があったり。三陸の被災地で円顔行脚した様子や渋谷にでかでか広告を出した「死ぬな生きろ」のメッセージ。最後、福島桜を見ていると、本当にお上手な書はないが、それぞれがとてもいい、と思える。言葉にできない言葉の魅力。書が絵として写真として、だけど具体的でものすごくいい。

一番気に入ったのは、印度で描いた「大地」という文字だ。この現物の前で、しばらくぼんやりしてしまった。

帰り際、たまたま藤原新也氏本人が来館され、書籍にサインをしてくれた。3570円の「書行無常」と名付けられた本は、文章、写真、書と、絵本のような、辞書のような地図のような、不思議な魅力に溢れた本だ。

サインをしてもらった。

「書行無常」(藤原新也著)集英社 \3570
下記は、上記本の内容抜粋(写真)
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