船の上
例えば、大西洋の真ん中にいて、「今、宇宙空間を浮遊しているようだ」と言った人がいる。
「その向こう」に何を見るか、そこに何を期待するか。そういうモノを求めた大航海時代を経
て、地球は丸く、世界地図が完成した後の人たちの言葉である。もっと、向こう、という漠然
とした期待。未来、なんて言葉を当てはめる場合すらある。
有限であること、把握できること。それを躍起になって追い求めた「歴史」の果てで、ぼくは、
外枠のはっきりした空間に安堵している。空間も時間もゆがむというアインシュタインは興味
ぶかいが、同一空間で同時に起こる事象に、一秒の、1ミクロンの「ズレ」もない。
それが分かった今、ぼくは船の上から想像する「その向こう」の光景にホッとする。
暖かいところで戦場にむけて同情するような、そんな「安心」と「期待」、全てをひっくり返す
ような「サプライズ」を、等速直線運動的日々の中で、ソワソワする。
自分は「安全」だという絶対を信じ切って、「だから」、そうじゃない「もっと」サプライズを、と。
それも、漠然と広がる大洋ではなく、手の届きそうな距離に「島」がある光景の中にいて。