フランスの画家、ジョルジュ・ルオー(1871-1958)と
関係の深いパナソニック汐留美術館による展覧会。
今回は、
「ルオーが晩年、自身最後のアトリエで実際に使用していた画材道具や机などを用いて、
アトリエの一部再現」したアトリエの記憶と題した企画展だ。
同館収蔵作品の中で、初めて出品される「モデル、アトリエの思い出」は、
実際に見ると一際目立ってルオーらしさが印象深い作品だった。

館内は狭く、そんなに大規模に展開はされていない。
その分、一つひとつをゆっくりと見て回っても、時間を気にすることはない。
始まりは、ルオーが国立美術学校時代、
ギュスターヴ・モローのアトリエで学んだ初期の作品から。

最初に「オルフェウスの苦しみ または 地上で涙にくれるオルフェウス(習作)」をみて、
その太陽または月の色の重ね方に、ひかれる。
「人物のいる風景」では、どんよりした世界観の中にレンブラント的な光を表現している。
夜の色を茶色で現した「夜の風景 または よきサマリヤ人」は、
この時代の暗い色彩から次の明るさに移ろう途上か。

次はフォーヴ時代。
画家仲間と共同のアトリエで作品を生み出したこの時代は、
学生時代から5年ほどしか経っていないのに、ガラッと作風が変わる。
印象的なのは、色彩が明るくなったこと。
「二人の娼婦〈表〉」と「婦人像〈裏〉」の展示の仕方が絶妙だった。
個人的には、「手品師 又はピエロ」という作品が好きだ。
伸びのある筆さばき、明るい色調、そして黒の太線。
色味も構図も素晴らしい。
暗い中の赤、そして筆さばき、「法廷」はとても魅力的な作品だった。
構図も色調も好みだったのは「流浪者の休息」。
なんとも人間離れした格好と色が印象的な「アクロバット(軽業師 �Z)」。

陶磁器も展示されている。ティーセットと壺。
どちらもルオーのタッチが活きた面白い作品だった。

ルオーを語る上で、非常に重要な存在。
それがアンブロワーズ・ヴォラールだ。
その邸宅での政策が非常に素晴らしい。
色も形も顔も面白い名作「女曲馬師(人形の顔)」、
少ない線で、豊かな表情をみせる「踊り子と白い犬」、
色合いと直線具合が見事な「道化師」、目を引く色と形の「裁判官たち」、
こんなキリストは初めてだと思える(アップの仕方も絶妙)「キリスト」など、
この展示の部屋は、非常に豊かなルオー色だった。
「日本の武士(武者絵)」というのも、ルオーの太い黒線が表現すると、素晴らしかった。

『ミセレーレ』(エトワール・フィラント社、1948年)と
『ユビュおやじの再生』(アンブロワーズ・ヴォラール出版、1932年)の
2つの版画作品の中からも展示がある。
「でも愛することができたなら、なんと楽しいことだろう(『ミセレーレ』13)」は
とてもやさしい表情をしている。
「困り者植民者(『ユビュおやじの再生』2)」や
「候補者さんブドゥバダブー(『ユビュおやじの再生』3)」はとても漫画チックで愛嬌がある。
構図の妙と、目と髭(逆向き)が印象的な「政治屋(『ユビュおやじの再生』4)」と
「結婚(『ユビュおやじの再生』17)」が個人的には好きだった。

ルオー、最期のアトリエ。
1940年から50年代の作品は、完成した感がある。
中でも「クマエの巫女」はお気に入りだ。
とにかくルオーの(黒の)太線。これを「飾りの花」では存分に見せてくれる。
麻布で裏打ちした紙の油彩が、ルオーの作風にマッチして素晴らしい。
ぼんやりしているのに気持ちがはっきりと伝わる「避難する人たち(エクソドゥス)」や、
皿の凹の部分に「古きヴェルサイユ〈表〉」、
凸の部分に「花〈裏〉」を描いた2作品も見事だった。
裏打ちされた凸凹が悦妙な「秋の夜景」などを見つつ、
今回の展示会の花、「モデル、アトリエの思い出」を眺める。
まだ学生だったルオーが、モデルをおいて書いていたアトリエでの思い出を、
この盤面付け加えた。彼は、作品を何度も描きなおしている。
アンリ・リュップの肖像画では、動画で描き替えぶりを詳しく説明している。
色を塗り重ね、なんども描きなおし、完成したものを寝室に飾り、
ある晩、それを持ち出して全く違うものにする。
アンリ・リュップの肖像は、それを思い出に変えてしまったと説明してた。

最後は、再現されたアトリエと、いくつかの作品。
中でも「マドレーヌ」は目を引く。
作品の裏側も見せてくれる面白い展示方法で、なかなか興味深かった。
一番印象にのこっているのは、大きな絵の具のチューブと、
そのチューブに抜け重なった色の層。
そんなアトリエを抜けて、小さな「アトリエ作品」という部屋に
10枚の作品が展示されており、大きくても40�p、だいたい20�pほどの作品が
統一感をもって並べられていると、ルオーの空間に心地よさを覚えた。



















〈以下は、公式ホームページより〉















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Georges Rouault: Memories of the Artist’s Studio
ジョルジュ・ルオー アトリエの記憶

@パナソニック汐留美術館(東京)
2026年4月30日(木)