ノンフィクション「イサム・ノグチ」(ドウス昌代著/講談社)の中にある言葉。日本人の父親とアメリカ人の母親。その間に産まれ、幼少期を日本で暮らすが「アメリカ人」に見られ、アメリカでは日本人に見られる。第二次世界大戦の混乱を超え、彫刻家・芸術家として生きていくイサム・ノグチの生涯を描いたこの著書の中で、「大いなる始まり(Great
Beginning/グレート・ビギニング)」は、イサム・ノグチ自身が口にした言葉として記されている。ちょうど、アメリカと日本で有名になりつつあった彼が、ピカソなどと肩を並べて仕事をした「ユネスコ本部」に設計された「庭園」。イサム・ノグチの中にある「日本」が色濃くでている割には、日本人の目からすれば、あくまでアメリカ人がつくった庭園などと評される、、、という経緯。資金を集めて、庭園という空間ごとを彫刻にしようとした彼。イサム・ノグチは、この1960年代を自身の大いなる始まりと呼んだのだ。
様々な困難。そして失敗。そこからこそ学ぶべきもの。それを持って「始める」というこの言葉。
今、日本は未曾有の大災害の中で、あらゆる困難下にある。がんばろう。ひとつなろう。そういうスローガンが飛び交う時代にある。
そんな今こそ、「次」へ向かう「グレート・ビギニング」であると考えたい。壊され、流された街を復興する。再生する。それも、未来型の、とても「進んだ」街を。そういう意味も込めると、この「大いなる始まり(グレート・ビギニング)」は、とても意義があり、そして力強い言葉に思えてくる。
2011.04.09記