best of green mind '09
秦基博 (2010年発売)
ディスク:1
やわらかな午後に遅い朝食を
虹が消えた日
シンクロ
Lily
君とはもう出会えない
僕らをつなぐもの
最悪の日々
赤が沈む
サークルズ
鱗(うろこ)
dot
Theme of GREEN MIND<Instrumental>
アイ(弾き語りVersion)
ディスク:2
朝が来る前に
フォーエバーソング
Halation
プール
ファソラシドレミ
Baby, I miss you
キミ、メグル、ボク
花咲きポプラ
青い蝶
風景
弦の擦れる音が椀の中で響くような、心地よさがあるアルバム。弾き語りのアルバムといっても、Disc1では拍手や歓声などがほとんどない。
声と音とが歌になって、ダイレクトにガツンと入ってくる。
このアルバムは、それにつきる。
「何かを始めるのに 遅すぎるなんてないから」
そんなストレートなメッセージを、透き通る声で、高音で叫ぶので、いやぁ、まったくね、その通りだね、となる。名曲「シンクロ」に至っては、弾き語りの方が、この曲の良さが十分に出ているな、と聞けば聞くほど思う。
「君のその胸の鼓動と 僕の胸のざわめきが
響いて 響き合って 同じように震えあって
まるで同じもののように シンクロするよ」
「君とはもう出会えない」は、君とはもう、君とはもう、君とはもう、という三回の叫び。声がすーっと伸びて、本当に気持ちいいぐらいの悲しい曲。彼の声で歌うからこそ、というものの一つに「悲しさ」は外せない。
「彼女にふられ 三秒後 財布をなくしちゃって
靴底のガムとろうとして自転車にはねられる
いつだって僕の人生はこんな感じです」
(「最悪の日々」)
みたいな。
「赤が沈む」は名曲。井上陽水を思わせるイントロのギター。そしてタイトル、歌詞が非常に良い。
「狂ったように赤が沈む 追いかけても 追いかけても
僕はただ願っている 燃えるような空よ
何も残さず 焼き尽くしてよ」
「サークルズ」もまた代名詞的な爽やかな一曲。
名曲「鱗」に続く」序奏的な。ジャラン、と響く弦が気持ちいい。「少し伸びた前髪を かき上げた その先に見えた」。
その歌い始めまでに、イエイ、オウオウ、フーと。これから始まるぞ、と秦は奏でる。伸びやかなサビ、上向きの風がびゅーっと吹いて、持ち上げてくれるような、そんな声だ。そんなリズムだ、そんな歌だ。
気持ちいい。
そして「アイ」。アコースティックバージョンとわざわざ明記しているが、この曲はアコースティックだからいいのだ、と再認識する。
「その手に触れて 心に触れて
ただの一秒が永遠よりながくなる 魔法みたい」
直球のラブソング、言葉が強いな、とより感じさせてくれる。
ディスクを変えて2枚目。緩やかなイントロから始まる。
「朝が来る前に」。ん?と気づかされるのは、その臨場感。1枚目は秦の声とギターの音だけが切り取られていたのに、2枚目からは音が広がっている。曲が終わって、拍手、そして「ありがとうございました」という秦の声。
そうだ、弾き語りバージョンとは、こうだった、とここで思い出したり。
「フォーエバーソング」が終わると、大拍手の中、ステージの秦がギターを奏でる(そんな光景が想像できる)様子がわかる大拍手。「Halation」はそうやって始まる。
「ファソラシドレミ」の前では手拍子を強要するシーンも。一気にライブ感が増す。これはこれで、やっぱりいい。
「キミ、メグル、ボク」は、全体を通しても一番アガルところ。
「いたずらに絡まる運命 僕ら ずっと探してたんだ
そして今 二人出会えた きっと偶然なんかじゃない
このまま そばにいてほしい」
アガッたまま続く「花咲きポプラ」。知らず知らず上半身がゆれる。
一旦、ぐっと上げて、そしてぎゅっと締める次の一曲というのが好きだ。そういう意味で「青い蝶」はすばらしい。
最後の「風景」は、ぼんやり夕暮れを眺めているような。「あなたを守れるように やさしくいられるように」
自分の声を自分の音で届ける一枚。これは、秦基博を一番近くで感じられるし、その彼の、この伝え方が、ぼくは好きだ。
最初から最後まで。途中で止めず、休憩せず。一気に聞いて、思い切り浸って、そして終わる。この時間が心地良い。
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