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ドイツのボンで生まれ、オーストリア、ウィーンで花咲いたルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン。幼い頃から天才ピアニスト、モーツァルトと比較され、その2世との呼び声を背景に、彼は天才ピアニストへと成長する。時はフランス革命とナポレオンの邁進。三十を目前にした彼は絶望的な異変の前に立ちすくむ。音楽家としては絶望的ともいえる聴覚への障害。途方に暮れた彼は、医師の勧めでハイリゲンシュタットという村で静養をとる。

そこでしたためたのが「ハイリゲンシュタットの遺書」と呼ばれるもの。実際は彼自身の手によって封印されたが、そこには、もう、だめだ、、、というどん底まで落ちた彼の気持ちがしたためられている。その「遺書」をも封印した強い気持ち、音楽への情熱。彼は再起する。その後、『英雄』『運命』『田園』と名曲を生みだし、それまでにも増して力強い作品となった。最期の名曲『歓喜の歌』は、彼の人生をそのまま再現したような、絶望からの昇天が描かれている。このハイリゲンシュタットの遺書は、彼が昇りつめるための起点であり、スイッチであった。

ハイリゲンシュタットの遺書

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