島。そこに滞留するあの雰囲気はなんだろう。一言で言えば匂いだ。たぶん魚の、潮の、もしかしたら風の、もっと言えば太陽とか土とかの。ゆったりたゆたう人々の会話が、おかしな話だけど匂いになって、雰囲気みたいなものを醸しだしている。往々にして、それはとてものんびりしている。熱海からフェリーで30分、首都圏から最も近い離島・初島は、最近アートに振れる島が多い中で、「リゾート」を全面に出していた。それが、一つずつパズルのピースのように「ゆずり」あって、見事に調和している、というか。今回は日帰りだったが、ぜひ宿泊して、思う存分楽しみたい。そう思わせる要素が満載だった。
リゾートアイランド。初島は大きく分けて3つのゾーンからなっている。地図を見ると「周遊道」なるものがあるので、それに沿って歩いてみた。
まず、港を正面に見て左側。ここは「初島アイランドリゾート」と称するエリア。テントやトレーラーのヴィラに泊まり、海を目前にしたプールや温泉、山の中で思い切り遊ぶアスレチックパーク「SARUTOBI」、アジアな雰囲気でくつろぐR-Asiaなるガーデンが充実している。R-Asiaは入場料として800円を取るだけに、なんとも落ち着ける空間を演出。ハンモッグに揺られ、かき氷やビールを飲み、「アジア」を謳うだけにトゥクトゥクがあったり、アジアのビールがあったり、花や木々が咲きほこっていたり、と。いやぁ、のんびりした。一番、落ち着ける空間だった。その初島アイランドリゾートへは、港から「食堂街」なる、地元の漁師が朝釣ったばかりの魚介を提供する「食堂」を通り越し、海沿いにずっと歩いていくと着く。所々にベンチや灰皿などが完備されているところが嬉しい。
広大なリゾートエリアを抜けると、展望台やテニスコート、ヘリポートなどがある中央のエリアへ。そのまま歩くと、島の左側にドンっと存在感満載で建つクランドエクシブ初島クラブがある。これはリゾートトラストが展開する大きな箱のホテル。その敷地内だけでなんでも出来るのではないかと言うほどの充実ぶりだ。つまりは、テントやトレーラーで「キャンプ」気分を味わいたいなら左側へ、ホテルでくつろぐなら右側へといったところ。
そして忘れてはならないのが中央エリア。先述の食堂街の後ろ、高台に建ち、趣満載の「小中学校」の近辺は島人が暮らす「民宿エリア」。釣りやダイビングなどを楽しむひとは、ここに宿をとっているんだろう。余談だがこの小中学校、校歌は作詞阿久悠、作曲三木たかしの黄金コンビだ。校門の前にでかでかと石碑があった。漁師達は島の右端に陣取り、毎日漁へ出かけているらしい。所々にバーベキューレストランも点在したりして、なるほど「観光」を主な産業にしている様が伺える。民宿エリアでウロウロしていた中学生?の男の子も「お客さん」慣れなのか、愛想がいいし、軒先で座り込んで話し込んでいたおばあさん達も実に親切だった。コンビニなんてなくても、正直「観光客プライス」でいちいち少し値段が高めでも、この島の雰囲気には、どっぷり浸かって余りある「のんびり」が存在していた。あ〜、日帰りだったことが実にもったいない。