アンリ・ルソーから始まる 素朴派とアウトサイダーズの世界
@東京・世田谷美術館

2013年11月02日

世田谷の森、砧公園に位置する世田谷美術館、略してセタビ。地下のセタビカフェはガレットの美味しい軽食屋、一階のフレンチレストランは、休日ともなれば冠婚葬祭の恰好をした方々が「ちゃんと食事する」場所となる。何より、ここの美術館の魅力はワークショップが多いこと。子どもから大人まで、美術・芸術に触れられるのがうれしい。

世田谷区民なら申請すればすぐにもらえるせたがやアーツカードを提示すれば2割引の800円になる「アンリ・ルソーから始まる 素朴派とアウトサイダーズの世界」を見た。

展覧会図録 1200円

ぼくは、アンリ・ルソーが好きだ。ニューヨークにいて、毎日どこかの美術館に通っていた頃、イラストのようで確実に絵画で、だけと平べったいのに鬱蒼として立体的な森。なんとも不思議だけど、とにかく「好きだな」と思った「原始林の猿」。あれから木々の多い、色彩豊かな人だなと思う一方で、小学生が描いたようなボールを投げるひげのおじさん「フットボールをする人々」や、満月が印象的な「眠れるジプシーの女」など、いろんなテイストの絵があって、どれも本当に好きだな、と。

とはいえ、まだ好きな画家の一人、であったルソーを、ぐっともっと魅力的にさせたのは原田マハ著「楽園のカンヴァス」を読んだからか。

素朴、そしてアウトサイダーな世界が、このアンリ・ルソーと繋がり、もっと踏み込んで「彼」から始まるという企画も納得できたのも、「楽園のカンヴァス」を読んだからだと思う。

展覧会の入り口を入ってすぐ、このアンリ・ルソーの3枚の絵に、一気にこころをつかまれた。

写真は図録より。

まず、「サン=ニコラ河岸から見たシテ島」。満月が印象的でなんとも直線的、そしてダークトーン。一気に惹きつけられて二枚目、密かにルソーが思いを寄せていた女性の相手の「おとこ」、「フリュマンス・ビッシュの肖像」。最後は、あの森を思わせる「散歩」。この三点を初め、その後も続く作品はセタビの選集。だからか、作品一点一点紹介コメントが、実に面白かったのも印象深い。

アンリ・ルソーの作品の後も、素朴派と呼ばれる人たちの作品が続き・・・、量・質ともに飽きさせず、不足感のないちょうどいい塩梅で続いていく。

個人的に気に入ったのは、カミーユ・ボンボワ。なんとも言えないタッチで、イラストっぽい、のに複雑に絵画である点が、アンリ・ルソーに近いのか。

楽器をしていた作者が描く、楽師と街角の何気ない風景。オルネオーレ・メテルリの世界も好きだ。

自分の部屋に飾るなら、こんなのがいいな、と具体的に「手にした」ことを想像するほど、欲しいなと思わせるアートが続く。

道端と放浪の画家として紹介される一角。

山下清の貼り絵からはじまった一連の作品の中で、とにかく個人的にグッときたのはビル・トレイラーの一枚。「人と犬のいる家」と題されたこの一枚の「人」が、とにかくどれもいい。

そして、圧倒的に存在したバスキア。木の棚?に描いた男の目には「EYE」の文字。落書き以上のこの作品がかっこいい!と思わせるのがすごい。

バスキアだとも知らず、振り向いて部屋の中央におかれたこの棚が、直感的に「いい!」と思えた。

そして、大きな絵画「SEE」を見ていると、素朴派だとかアウトサイダーとかいわずとも、とにかくいい、いいもんはいい、と実感させられる。

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どんどん終盤に向かう中で、最後のブロック、アウトサイダーズ。

カルロ・ジネッリの作品たちは、直球で訴えてくる何かがあった。心の中をのぞかせる作品に触れて

首をひねる間もないというか
そうすることの意味すらなかったというか

いいものはいい。

まさしくそのひと言につきる展覧会だった。