築地本マルシェ
@東京・汐留
2018年2月18日

23の出版社(出店・ブース)が所狭しと並ぶマルシェ。取れたて、かつ、目利きの聞いた「本」が並ぶイベント。そのブースと同スペースをとって大ステージと小ステージがおかれ、ブースの一角では読み聞かせもある。家族で、親子で、恋人同士で、友達と。多くはひとりでぶらりと。そんな人達が多かった印象。まずは、入り口を入って白い袋をもらう。さらっと流し見すると、正直つまらない。目を引く飾りがあるわけでもない。「売ろう」と迫ってくるポップもない。が、新鮮な野菜、おいしい魚を無機質に並べて「見てもらったら分かる」と言わんばかりに並べられる本たち。足を止め、目を凝らし、手に取ってみる。その隣の本、次は、その横。そうして、次次と手に取ると、もう抜け出させない「オモシロチェーン。最高のサイクル」。え、こんな本があるのか。これは、面白い。なんて静かに興奮してくる。リトルモアのブースで装丁の美しい詩集を見て、背面にある学研プラスのブースから息子が図鑑が欲しいと袖を引く。どれどれ、と見ると、小学館とは一味違う学研の図鑑。DVDがBBCだ!とか、拡張現実でスマホで見られる、なんて驚いていると、スターウォーズのステッカーをもらった。作り手の話も面白い。子供にもしっかりと本を薦める辺りが、普段から書店の店頭に立っているわけではなく、デスクで企画なり校正をしている差を感じる。が、そこが、また、いい。河出書房では、懐かしい名作や切り口の鋭いアート本を見て、大修館ではジーニアスよろしく、英語と英語の世界を日本語で見事に現した「辞書」を見る。他にも大学出版部教会、みすず書房、平凡社に朝倉書店、帝国書院。教科書や副読本がそのまま並ぶ辺りもヲカシイ。休憩スペースで本を広げて、どうしようか、こうしようかと考えて、絵本コーナーで息子が読み聞かせに耳をすませる。最後にまとめて会計を済ませて、後にする。

この日買ったのは 「文様えほん」(谷山彩子作/あすなろ書房)
         「すりかえかめん」(はらこうへい作/河出書房新社)
         「学研の図鑑LIVE 動物」(学研教育出版)

そして、もう一つ、朝日新聞で申し込んでいた講演、川上未映子『読書はわれわれの何を作るのか』を聞く。人って、根本のところどうなんだろう、というのがあって、繕ってそれっぽく話す表面よりもむしろインパクトがあるが、この人は根本が面白いのだと思う。本を読むことを特別視する世の中の「なぜか」を話しながら、結局、魂が本を欲する人がいるという始まりの説明。それは運動神経、食べるのが好き、みたいなもので「おやつと絵本を並べて置いて、まず絵本を取る子供というのがいる」ということ。話が進んで、笑いあり、本音あり、ぶっちゃけあり。くら〜い、直木賞とか芥川賞とかの本、と言ってからすぐに怒られますね、とご本人。終始とっ散らかり気味で進んでつまりは、読書は言葉からなっていて、言葉は、同じ場面を見たときに、のっぺりとした一面に角度(切り込みが)が入れられる。そんな言葉を知ること、語彙を増やすことが文化的背景の底上げになるのが1つ目。そして、世の中が作られた(フィクション)の物語の中にいるように「当たり前」として成っているものに、オカシイ・NO、を言えるためには、フィクション(物語=読書)をたくさん知って、都度、オカシイ・NOを考えることで、ジェンダーのこと、戦争のこと、アタリマエの「変さ」に気づけるのが2つ目。読書はわれわれの、つまりはそんなことをつくるのだ、と。時間がなくて、もっと話したいことがあって。だから来年も呼んでください、と言って終演。登壇した時にパラパラだった拍手が、終わりには大きな拍手に変わっていたことが全てを示した講演だった。






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