骨格標本や剥製を500点以上並べる圧倒的なスケールで、哺乳類の世界をぎゅっと凝縮する展覧会。9年という時を経て、満を持して開催された大哺乳類展の第二弾は、いやはや素晴らしいの一言。それにしても、我々の仲間、哺乳類には、陸の生活はもちろん、海のなかま、そして空を飛ぶものまで本当に多彩だな、と思わせる一方で、動物園ならバラバラにみる「いきもの」を、剥製という形で【大行進】されると、いつまでも見てられる。

まずは陸棲哺乳類で最大のアフリカゾウの骨格標本に度肝を抜かれる。その横にジュゴンのものもあり、ほんわかした気分にさせられたあと、見上げると、海棲哺乳類最大のシロナガスクジラの、下あごの骨が上に吊されている。その大きさは、アフリカゾウをすっぽり飲み込む大きさ。この比較に、どこか圧倒されてしまう。その後、骨格標本が続き、レッサーパンダの横にジャイアントパンダが並び、骨だけみるとそっくりなことに興味がわき、ライオンの牙、シロサイのがっしりとした骨格、そしてミナミゾウアザラシの大きさに驚いた後、ゴリラは、骨になってもゴリラだった。

陸上最速のチーターは、骨になってもしゅっとしており、その横の剥製と、さらには上で上映される走るチーターの映像に、これはチーター好きはもちろん、それ以外の人もファンになるのではないかと思うほど。バイソンもトラも、骨だけで訴えてくる魅力がある。速く走るチーターと比して、高く飛ぶブラックバックの跳躍を示す展示も興味深かった。テナガザル、コウモリ、アザラシなどをゆったり見ようとするも、背後に、というより中央にずらっと並んだゾーン3。ここには、分類別に約200種もの剥製が、大行進をしている。この展覧会の最大の見せ場。小さなものから大きなものまで。かわいいもの、かっこいいもの、おそろしいものがそれぞれ同じ方向に向かっている剥製は、ちょっと見た者にしか分からない魅力がある。マッコウクジラは、もうその巨体が圧巻だ。

オリックスやトナカイ、シャチ、カバ。骨と剥製と、小学生にもわかるようなパネル解説と映像。さらには、実際に触れるものまであって、大人も子供もどはまりの展覧会というのがわかる。食べる、生殖とテーマをわけた展示も、肉食動物の牙と、草食動物のすりつぶすような平らな歯、陰茎に骨をもつものも展示まで。1つひとつじっくり見せてしまう技が、隅々まで素晴らしい。イッカクの牙を触り、象牙を思い出して、ハンコを連想するのがおじさんの性か。

アーティストの描く動物の世界、ギフトショップまで、一連の流れが、かなり精巧につくりこむのは、この博物館のお得意とするところ。最初から最後まで、学ぶという堅苦しさのない、楽しい中での学びで充満した空間だった。

チーターは、人間よりもずいぶん速く走れるように進化した(生き残るために)、ブラックバックは、人間よりもずいぶん高く跳べるように進化した(行き残るために)。キリン、ゾウ、サイなどそれぞれに生きのこりにかけた進化を見せたあと。

とても小さく、人間の脳が展示されている。霊長目、ヒト科、Homo sappiensの我々人間は、直立二足歩行のロコモーションをもつ唯一の哺乳類。そして、もっとも進化したのは「脳」である、と。生き残るために、進化を見せた脳が、その作り物が、ぼんやりと浮かぶ展示を見て、この展覧会を終える。

























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Mammals 2 -Srruggle for Life -
大哺乳類展2
みんなの生き残り作戦

@国立科学博物館(東京・上野公園)
2019年6月8日(土)