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インディヘニスモ

インディヘニスモとは、南米社会における「先住民文化の復権運動」を意味するコトバ。提唱したのは、ペルーの思想家ホセ・カルロス・マリアテギ。(1920年頃)

なぜ、今、このコトバなのか。
現在、南米社会は「反米」という旗印のもと、先住民としての生活を、経済を、文化を、取り戻そうとしている。かつて、南北に別れた大陸にヨーロッパ人が攻め入り、先住民から奪った諸々、欧州色に染め上げられた言葉や思想、排除されてしまった人たちの経済、文化、生活。それらをもう一度自分たちの手に、という固い決意のように思える。政治危機や経済危機をくりかえしながら、それでも、アンデス山地でアルパカを編み、民族音楽で哀愁を奏でていた人たちの「復権」。

去年(2005年)秋、南北アメリカ大陸の貿易交渉(AFTA)で、米国と南米諸国の間に明確な亀裂が入った。「ノー」を突きつけ、「反米」の意志を示した。そして、去年の12月、一つの大きな動きがあった。ボリビアの大統領選で先住民族出身でコカ栽培農民代表のエボ・モラレスが勝利し、新大統領となったのだ。もとより、反米と民族主義を掲げたベネズエラのチャベスに続く動きであり、今後のペルー大統領選にもその波が注目を集める。

人種の「るつぼ」、南米社会。先住民と白人、そしてメスティーソと呼ばれる混血の人びと。誰にとってのエネルギーなのか、誰のための政治なのか。ボリビアのモラレス新大統領は、先住民の権利の拡大を約束し、民意の反映であるデモ活動を扇動した。エネルギーの国有化や政策決定のプロセスに先住民の人びとの声を反映させると言う。その、勝利であり、そんな民意。南米社会は疲弊している。けれど、援助に頼らない強さを示した。反米という意識だけで突っ走るのではなく、確固たる「国」として、協力しながら大きくなる、そんなインディヘニスモであってほしい。復権は、なにも「逆戻り」を意味するのではなく、あたらしい「次」をも生み出すものであるのだから。