(犬島にて)
犬島・精錬所
Okayama, Japan
瀬戸内海に浮かぶ島で、「また」アートプロジェクトが動き始めている。有名な「直島」の東側に位置するこの島は、程よく小さく、島中が独特の時間感覚で動いている。人口は64人。診療所は週三回。フェリーが岡山との間をつなぐ。ぼくがこの島を訪れたのはずいぶん昔だが、その当時でも、写真の「精錬所跡」では前衛ダンスパフォーマンス集団が公演を行うなど、アートと深く結びついている印象があった。
それが、「アートプロジェクト」として動き出し、カフェが出来、見学ツアーが立ち上がった。この島に精錬所があったこと、そしてそれが「美しく」風化したこと。そこに新たな光が当てられようとしていること。なんというか、【不足の三拍子】がそろったこの島は、だからこそ満足を演出してくれるようで、とても不思議だ。
抜けるような青い空に、白すぎる雲がわき、それを突き刺すような赤レンガ。例えば、はなから「美術館」なり「博物館」を作ろうとしてこのデザインをしたならわざとらしすぎるが、それが工場だったし、現役当時は煙を上げ、何千人もの人が働いていたのだ、ということを考えると、その跡の、この奇跡的な残り方がまた味わい深い。
精錬所跡以外にも、小さな島だけに海は「豊富」だし、キャンプ場や民宿などもある。自然の中で無理をしないでアートするスタンスが、南のほうのヨーロッパな感じがしていい。
まだまだプロジェクトも始まったところで、これからどういう展開を見せるかが注目だが、行くとすれば、人の少ないうちに行きたい。ちなみにぼくが訪れたときは、カメラを構えて「観光」しているひとなど3人?ぐらいしかいなかった。だからいいのだとも思ったけれど、さすがに食べるところも少なかった。そういう意味では、カフェなんかも出来た今がねらい時かも知れない。