JALの道
2007年02月12日
スイス航空やデルタ航空(アメリカ)。日本にも乗り入れており、フラッグ・キャリアともいうべき大航空会社が破綻する。僕らは、そのニュースを少々の驚きをもって受け取る。が、そもそも航空会社が利益を出し、「経営」していくには、正しく茨の道なのだろうということも同時に思い知らされる。

飛行機=高級。なんとなく、憧れ。格安航空券全盛の今、それはもうありえない。この春、関西空港に乗り入れる「ジェット・スター」を初め、これまで独立路線をとってきたディスティネーションも、「コスト」パフォーマンスを武器にどんどん乗り入れてくるだろう。そこにおいて、高い=ステータス=安全、という幻想に近い驕りに胡座をかいていると、、、再生への道は遠い。

名付けて「JALの道」。
誰もが認める日本のフラッグ・キャリア、JAL。が、9.11に引き続き、SARSの流行で旅客数は減少し、追い討ちをかけるようにイラク戦争などの影響で燃料費が高騰。運賃は安く出来ず、お客も少ないという悪条件が続いた。さらなる追い討ちは、次々に出てきた「安全面」での不安。JALは、昨年、もう少しで大事故という「トラブル」を頻発させた。顧客離れは加速。最後の決定打は、、、経営陣のゴタゴタ。
もう、目にもあまる企業体質と、相変わらずの「おごり」を見せ付けられ、ユーザーは全日空(ANA)を選んだ。ANAは、旅客と航空貨物を合わせて、昨年度、最高益を達成したという。

大きな差が出た。

1987年に民営化された日本航空は、国際線を主に「JALだから仕方ない」という、どこか特別な感を抱かせる「高運賃」でやってこれた。なんとなく、安全だし、機内食も美味しいし、「いい航空会社だから」というユーザーのあやふやなを評価を、JAL側も鵜呑みして驕ってきた。

転機は、スカイマークなど、新規参入の低コストキャリアが名乗りを挙げた時期。「箱」だけでも大きくしようと考えたJALは、弱かった国内線をカバーするために、国内三位だった日本エアーシステム(JAS)を合併。これで、国内・国際線、両方において不動のトップキャリアになった。

が・・・、問題はそこから。社員の体質、考え方、そして何よりシステム面での融合がうまくいかず、対経営陣という図式の中に、8つもの労働組合が存在するという、まぁ、なんというか典型的な日本の大企業になってしまった。なかなか動けない・・・、図体だけのでかい会社(ここまでいわれることもある)。

一方のANAは、JALとJASの合併を受け、企業体制を整えた。高コスト体質だったのはJALとそう違いはない。が、先にコスト削減、リストラを断行したANAに、昨年度の最高益がある。

動きの取れないJAL。経営陣はなんとかゴタゴタから抜け出し、「さぁ」と腰を上げたところ。が、8つもある労働組合との折り合い、加えて、社内システムと経営方針の統合。そこにきて、給与をカットした社員に課す「より確実で効率的」な業務。う〜ん。大丈夫かな?

2010年。西松社長が先の再生プランの中で強調した年だ。この年、成田と羽田の拡張工事が終わり、ビジネスチャンスは確実に増える。そこに照準を合わせて、今のJALを一新させ、新たな、健全で利益を産める体制にすると。加えて、今年、2007年が自主再建の最後の年とも位置付ける。つまり、切羽詰っている感は重々承知。だからということで、、、社員のリストラ、給与カットなどの「コスト削減」についで、不採算路線の撤退(11路線)と、高収益路線の拡充をはかる、と。ジャンボ機など効率の悪い機体を、低燃費で小回りの聞く中型機に変える作業も同時進行する。今年から三年。JALの進む道の先には、さて、何があるのか。

安全という言葉がまったくなかったのは、、、いわずもがなというところなのか?まさかJR西日本の二の舞だけは何としても避けなければならない。

JAL。客離れは確かだと思う。ユーザーの一人として、なぜJALを選ぶのかということを考えたとき、国際線においては、まず僕は候補に上がらない。値段順にリストアップして、次にアライアンスを見る。例えば、1万円高くても、アライアンスがここと一緒だからこっちにしてマイルを貯めよう、、、とか。今現在、僕のいうコストパフォーマンス(安い)の順でも、アライアンスの順でもJALは出てこない。

が、、、チャンスはある。これがJALの道。
まず、コストパフォーマンス。今、二十代前半の旅行者は減少傾向にあるらしい。例えば、学生時代を格安航空券の幕開けと合致した僕のような世代にとっては、「慣れている」ので、日本語だからという条件だけでは高いエアー代を払う気はない。ただし、旅慣れしていない若者が働き始め、少々の時間とお金に余裕が出来たとき、アジア系キャリアよりもJALを選ぶかもしれない。団塊の世代の多くも、旅デビューは、安心と日本語をチョイスするだろう。そういう人にとっての高パフォーマンスは、やはり「今までのJALらしさ」、少々高くてもJALだからというあやふやな評。だから、無理に人員削減をして、安っぽいサービスにして一万円下げるよりも、徹底的に無駄を省いたなら、言ってもJALなのでというステータスを思わせるようなサービスは残すべきだと思う。そうしないと本当に差が出ない。
次に、アライアンス。これまで頑なに独自の提携にこだわってきた同社も、ついに?というか、ワン・ワールドというアライアンスに参加する。スターアライアンスのANAに比べると、少々使い勝手がどうかと思うが、ブリティッシュ、アメリカン、キャセイ、イベリア、カンタスという各フラッグ・キャリアとのマイル提携は大きな魅力だ。

つまり、何百億円をどこからどう削るのかなど、具体的な青写真をつくって、それを断行するのはもちろん、最も大事なのは、「JALだから」という姿勢を確立させることだと僕は思う。その姿勢が、変なおごりに胡坐をかいていたのではいけないと思い知らされた今、逆に、背筋を伸ばして凛とする姿勢。言ってもJAL、ここでビシッと決めれば、再建は可能だと信じる。頑張って欲しいし、やるしかない。

(なんとなく、巨人を思い出す。なんやかんやといいつつ、野球は巨人人気が支えている)



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