30年前(これを記している今は2020年5月1日)の作品を聞きながら、とにかく懐かしいのは、私自身が中学2年、14歳でこのアルバムに出会い聞いていた頃を思い返すからであって、古いとは思わせない。宮沢和史が沖縄と出会ったアルバムであり、日本の情景を、変に詩的ではなく勢いよく、若々しく歌い上げた名作。



1曲目、「100万つぶの涙」。
悲しい沖縄の歴史を沖縄リズムで歌った一曲。

  幾年君を想ううちに
  僕も年老い
  眠る君によりそうように
  土へとかえる

  空じゃおひさまがそれ見て泣き出し
  ひゃくまんつぶの雨がふる
  草木はおどり かえるは歌い
  ぼくらのお墓は今宵も祭り

沖縄という土地の、お墓という文化、そして戦争という歴史。
これだけの歌詞を、この曲の軽快かつコミカルなリズムで洗い流してくれる名曲だ。



2曲目と3曲目は、当時の、バンドブームの雰囲気に飲まれたような?シングルカットまでされているので、レコード会社もコレでいこうとおもったのだろう2曲。

中学生だった私も、とてもとっつきやすい曲たちだ。

「過食症の君と拒食症の僕」

  どうせ食われる我身なら 苦悩の日々を日記につづって作家でデビュー

「逆立ちすれば答えがわかる」

  だけど ちょっぴり見方を 変えてみたら





4曲目は「川の流れは」。
どうしてか、中学の頃はこの曲が好きになれなかった。だけど、今はとても好きな一曲になっている。特に、サビ、宮沢和史の声(当時の!)が伸びやかで気持いい。なんともいえない声音だ。

  いつまで僕は
  知らん顔して
  歌えばいいのだろう
  できればいっそこのまま 海へ流してくれ

5曲目は名曲、「中央線」。
真ん中通るは中央線の、あの中央線。宮沢和史にとって、故郷の山梨まで続くこの路線は、中野や高円寺など、中央線沿いの歌の多い彼ならでは。始めて聞いた時から、この感じをなんと言えば良いのだろう。心地よかった、というか、それこそ湯船で、星でも浮かべながら聞いているような感じというか。後に、矢野顕子がカバーして、そちらも原曲に劣らずの名曲となった。

  君の家のほうに 流れ星が落ちた
  僕はハミガキやめて 電車に飛び乗る
  今頃君は 流れ星くだいて
  湯船に浮かべて 僕を待ってる

  走り出せ 中央線
  夜を越え 僕を乗せて







「中央線」から一気に曲調、歌い方を変えて、コミカルに「夜道」が始まり、中流家庭とかしもきたとか、言葉がダイレクトで、おもしろオカシイ、一曲。ベンツにつまずいて、運転手が留守だったのをいいことにエンブレムをおみやげにもらって、彼女の誕生日にあげよう、って、これ、なんの曲?と(笑)。

  これが僕の毎日なんだなと
  思ったらわびしくて また散歩に出向く


続いて「ウキウキルーキー」。
エスカル号に乗ってきたおじさんがある朝新聞に載って、もう会えないと思う。宮沢和史の子供時代の記憶を歌ったとも言われ、おじさんの車の中の秘密、ブレンドみそ汁、おもちゃに空想。曲と詞と声が合致した一曲だが、とにかくサビのウキウキー、が心地よい。実際に、コンサートで聞いても、キーンと突き刺さってきた(中2の時に行った大阪厚生年金ホールでのコンサートで)。

  大きくなった今でも ヘビィな夜が来た時も
  僕はヘラヘラへっちゃらさ 口笛吹くから飛んで来てね

8曲目の「おうちバイバイ」。
今も昔(これを一番聞いていた中学生時代)も、この曲が一番好きだ。まず、歌い出しの“どこで覚えたの?"の声がとても好き。そのままサビにいくまでの流れも好き。そして、やっぱり一番、宮沢和史の声の良さが出ている一曲だと感じる。歌の内容は、とても悲しく、夢を追う男女の別れ、と言う何とも青春ちっくな一曲だ。

  世の中にうまくすべり込めない夜は
  手のひらに君をかくしてにげた
  僕より早く歩きはじめた君は
  カバンの中にも入りきらないね
  バイ バイ バイ おうち バイ バイ バイ
  バイ バイ バイ おうち バイ バイ バイ

  電車がカタカタ窓をたたき出す頃
  僕の話を机に集め
  積み木みたいに 立ててはくずしてた
  そんな遊びにも あきたみたいだね
  バイ バイ バイ おうち バイ バイ バイ
  バイ バイ バイ おうち バイ バイ バイ



そして、締めの2曲。
「ルティカ」の詞の世界観は、一体何なんだ?と思って聞いていた。血まみれの腕じゃ、君を抱けない?はりつけ?なんだ、なんだ?と。だけど、ここまで来ると、完全にブームの世界に引きずりこまれているので、ルティカの世界でどっぷりと陶酔してしまう。

  教えてルティカ どこにいるの
  聞かせてルティカ 僕らの行方

最後は名曲「からたち野道」。
このアルバムで、「中央線」と「からたち野道」という二曲が生まれたことは意義深い。沖縄や南米といった音楽へ羽ばたく前の、東京の、何とも和な情景を歌い上げる。「からたち野道」は歌詞も絶品だ。

  赤い実にくちびる染めて
  空を見上げる
  これ以上つらい日が来ませんようにと
  飛び石踏んだ

  からたち野道 花ふく小道
  泣いたらだめよと虫の音小唄
  からたち野道 はるかな小道
  あのひとのもとへと続く道







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JAPANESKA
THE BOOM(1990年発売)

100万つぶの涙
過食症の君と拒食症の僕
逆立ちすれば答えがわかる(REMIX)
川の流れは
中央線
夜道
ウキウキルーキー
おうちバイバイ
ルティカ
からたち野道