生誕三百年 同い年の天才絵師
「若冲と蕪村」展
Celebrating Two Contemporary geniuses: Jakuchu and Buson

@東京(サントリー美術館)
2015年04月25日
→ reportに戻る

2008年、新たに若冲の作品が見つかった、というニュースを見て、その作品に釘付けにされてから7年、ようやくその作品に会えたというのがこの「若冲と蕪村」展だ。

白い像と黒い鯨という対比。何より、平面的に描かれ、シンボリックでもあるし、なんとも愛らしいフォルム。構図のすばらしさ云々よりも、直感的に「いいね!」したくなる圧倒的パワー。伊藤若冲の「像と鯨図屏風」(1797年)は、一見どころか、何度でも、何時間でも見ていられるほどの作品だ。六枚からなる像と鯨の世界。繊細かつ必要最低限の線と色から出来上がる世界は、何とも不思議だ。墨と白の世界の、とても現代的な作品とも言える。

その「像と鯨図屏風」のすぐ横に置かれるのが与謝蕪村の「山水図屏風」。その世界感の違い。パッとチャンネルを変えたような別世界が見事に面白い。なんとなく「THE」がつくような水墨画の世界。山間の家々と空を感じさせる絵。そこには、人たちの生活がしっかり見えるし聞こえてくる。そんな世界だ。

まずは4階の展示場を見て、その後、階段を下りるとあるのがこの2枚。どちらも滋賀県の山奥にあるMIHO Museum所蔵。その美術館ではどう展示されているのかは知らないけれど、なんとなく、このサントリー美術館ではなく、もっと広いスペースでゆったりと並べて欲しかった、というのがちょっと残念でもあった。とはいえ、この日は六本木で1年に一度行われる「アートナイト」の日。ということで、通常1300円の入館料が、500円だった、のでいいか。

若冲と蕪村。同年代を生きた二人を比較しながら薦める展示は、見ていて本当に面白い。若冲人気に、プラス蕪村という面白さ。若冲ここにあり!という相国寺の「鳴鶴図」や、ほかにも「達磨図」、「伏見人形図」などなど。中でも、私の一番好きな若冲「松上白鶴図」(絹本墨画)の前では、しばらくぼーっと見ていた。MIHO MUSEUM会場では、紙本墨画淡彩も展示されるそうだ。蕪村の方も、もちろん見所は多い。蕪村ならではの丸っこい人々の描き方に「Kawaii」と漏らしたり、松尾芭蕉の奥の細道には、蕪村ならでは風景を切り取る術が発揮されていて面白い。

いろんな見方で楽しめる展覧会だ。もちろん、若冲にしても蕪村にしても、コレというお目当ての作品を目指していくのもいいし(4/26現在、すでに後期展示時期にはいっており、前期の展示は終了している)、例えば〈虎〉という対象物を、若冲はどう描き、蕪村はどう表現しているのかをみるのも面白い。小さな作品から大きな屏風まで。人気のある展覧会なので、人のあまりいない平日の午前中などを狙って、のんびり過ごすのをお薦めする。