旧練成中学校を利用して誕生したアートセンター「3331 Arts Chiyoda」。いつも面白いのが多く、Paper Sky展や藤原新也展が印象的で、息子が誕生した日にも行った場所。で、また面白い展覧会があった。「たらしめる」という言葉にひかれ、多摩美術大学が街なかに置いた展示室で“Drawing Room / Exhibition Room という部屋を通して、各作家のバックボーンともいえる制作資料やドローイングを取り入れた会場構成"で展開。簡単に言えば、この絵、どんな人が描いたんだろう、と思いつつ、隣の部屋にはその人のアトリエがある、というもの。4人のアーティストというのも、絶妙な数で良かった。多すぎず、少なすぎず。これを無料公開しているところにありがたさを感じる。

さて、今回は30歳前後の若い多摩美出身アーティスト4人をピックアップ。まずは作品の展示室から見る。入り口を入って振り返ると、横幅8メートルの大きめの作品がかかる。飯田翔之介の「cave(over the rainbow)」。洞窟の中の混沌としたメイン作品の両サイドに、アメトーークのロゴのような虹がある。



洞窟を彫っているのか、その彫り後が大きな空洞の杭のように縦横無尽で、7人のこびとのようなカワイイ「人物」が作業をしている。そして、下がって全体を見渡すと、両サイドの虹が、昼と夜のような、しかも、虹にはなかなか無い光を吸収してしまう黒を用いているところにグッと惹かれる。

そして、部屋を移動して、この作家のアトリエを見る。小さな箒があって、きれい好きなのかなと思いつつ、椅子にかかった作業着?に注目。なんだか、センスが海外的な人だな、と思って置いてある本を見ると、人間の行動ウィッチング・・・。インスピレーションって、こういうところからくるのか、と感嘆したり。



次に、千葉大二郎の「八犬伝-DF」。タイトルを見て、初めて、忠や信という文字が浮かび上がってくる。単純に、作品として非常に魅力的で、全体のバランスがとても好きな一枚だ。こちらも8メートル近くある大作でアクリル・ジェッソでツルツルしたところに、描いている分、立体感がより際立つ。



こんなに宇宙的なのに、森の中を思わせる。パネルを貼り合わせて、コンピューター的でもあって、これはもしや、ゲームの世界の八犬伝か?とも。面白いのは、彼のアトリエに、古書の八犬伝があったり、児童用 尋常小學校修身書巻一 文部省 なんてものもある。アクリル板に四角を当てはめていくアート、その裏側が覗けて嬉しくなる。





次は渡部未乃の4作。一番大きな2.5mの「Overlap XW」、そして50p四方の「Overlap \」「Minerals V」、「Overlap ]U」。植物の世界感とミネラル、それはとても硬質なもので、なのに色が柔らかい。線が強いだけにその対比が面白いのと、どこかカンディンスキーのような。入り口から入ってちょうど見える場所に展示されているのも分かる気がする力強さがある。



そして、アトリエには植物の直線的な写真が並び、観葉植物もある。さらにはミネラルという鉱物の解説図、音楽。なんだか、彼女のアトリエがフワッと浮かんでくる。



最後は中野由紀子の「ぼやける、あつまる」。これは、幼稚園の教室に、先生が切って作って貼ってするのもと、決定的な違いを見つけるのが難しく(もちろん、クオリティ/上手さは全然違う)、だけど、1つ言えるのは、「表現」されているところだ。とても身近にあるものを、表現するという作風。個人的には、女性的だなと思う。目に見えているものが、ぼやけて、それが、集まって出来ている、と。



展示室でじっくり見て、アトリエに行って、置かれている本やなんかを眺めつつ、絵の具大きいなぁとか、小学校で使うようなバケツを使うのか、なんて考えていると、もう一度作品が見たくなって展示室に行く。この、距離。近すぎず(例えば、作品のすぐ隣にアトリエがあると興ざめする)、絶妙に心地よかった。













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EXHIBITIONS
絵画たらしめる

渡部未乃 飯田翔之介 千葉大二郎 中野由紀子

201.202:アキバタマビ21(多摩美術大学)@3331 Arts Chiyoda
2019年8月17日(土)