斬新さ、オリジナリティ、圧倒的な基礎(地肩の強さ)。まず、このクリムトの世界を見て感じたのはこれだ。ウィーン造形芸術協会から脱退して、ウィーン分離派として金色の世界を生み出すまで。展覧会の構成が面白い。

まずはクリムトその家族。「ヘレーネ・クリムトの肖像」は弟の嫁を描いたもの。なんともやさしい色使いが印象的だ。そして、「踊り子」。縦長の銅版をこんこんと裏打ちして表した踊り子が、アイコンとして収まり、なのに踊り出している印象。修業時代と劇場装飾という部屋では、シェークスピアの世界感をインパクトのある深紅で描き出した「ヘルメスヴィラの皇后エリザベートの寝室装飾のためのデザイン」。絵より額がすげえ!という「ソフォクレス『アンティゴネ』上演中のアテネのディオニュソス劇場」。ハッと息をのむほどの作品、「女神(ミューズ)とチェスをするレオナルド・ダ・ヴィンチ」。レオナルド・ダ・ヴィンチの金の指輪が、とても小さいのに浮かび上がって、とても印象的。「イザベラ・デステ」などの作品は、音階通りに歌い上げられるようなしっかりとした上手さをみることができる。

私生活の部屋を挟んで、ウィーンと日本1900。メインの部屋へと入る。ここには「アトリエ」という作品の前で足が止まる。じっくり見れば見るほど、画家のアトリエの創造力と、そのごりごりと飾られた完成度の高さを見る。「女ともだちT(姉妹たち)」は、クリムトさが出てきた作品で、黒い毛皮の2人の女の、右上のカラフルな小さな装飾がなんとも刺激的。「17歳のエミーリエ・フレーゲの肖像」も額がいい。

「ユディトT」と「ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)」を解説したパネルを熟読してから作品の前に足を運ぶ。この展覧会のメインだ。まずは「ユディトT」。金色のクリムトを表現したこの作品は1901年、クリムトが油彩で初めて金箔を用いた作品。女性の、この表情が、なんとも言いがたい魅力を持つ。そして、裸で鏡を持つ女性の「ヌーダ・ヴェリタス」は、実際に目の前にすると、その「高さ」がなんとも心を惹きつける。縦長で、すらっとクリムトの世界感を表現する。個人的には、圧倒的に一番気に入った作品。第1回、第2回、第10回、第14回のウィーン分離派展のポスターも並び、こうゆう、現代的なシンボリックの表現が実はクリムトの魅力をもっとも表しているのではないかとも思う。原寸大で複製された壁画、「ベートーヴェン・フリーズ」の空間は、目が光るゴリラが印象的で、いや、この三面を埋め尽くす世界感が、生でみたらどれだけすごいんだ?と想像が容易だったりする。「鬼火」の女性の数を数えながら、確かに夜って、こうだよなと思って見たり。

ゴッホに影響を受けたという丘の上に咲く花を描いた「丘の見える庭の風景」は、クリムトがクリムトであるオリジナリティを見せつける。かと思えば「ガブリエル・ガリア」で清楚な女性を描きながら、「オイゲニア・ブリマフェージの肖像」では、とてもらしい。この黄色い肖像画を見ながら、間違いなく今まで見た肖像画の中では一番カラフルだな、と。一方で、「白い服の女」のようにシンプルで、線が少なく、なのにインパクト大な作品も生み出す。グラフィック専門学校での「グスタフ・クリムト《哲学》」は、水中のような、宇宙のような、そこにある哲学を分かった気になる。

「女の三世代」は、本物の色のパワーを感じる。母の抱く子供の上の装飾、祖母の腕の筋。これだけ見るために入場料を払った、と言われても納得いくほどの作品。最後は「家族」を眺めながら、死んでるのかな、寝ているのかな、笑っているようにも見えるな、と思いつつ、展覧会を後にする。




(展覧会 フライヤーより)




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GVSTAV KLIMT Vienna - Japan 1900
クリムト展
ウィーンと日本1900

@東京都美術館(東京・上野公園)
2019年6月22日(土)