孤独の太陽
桑田佳祐 (1994年発売)

漫画ドリーム
しゃアない節

エロスで殺して(ROCK ON)

飛べないモスキート(MOSQUITO)
僕のお父さん
真夜中のダンディー
すべての歌に懺悔しな!!
孤独の太陽
太陽が消えた街
貧乏ブルース
JOURNEY

「いっさいがっさい…あんじょう学びや!!」

独特のかすれ声で絞りあげられるこの歌詞が、アルバム全体に通じているように思える。徹底的に自分を見つめる「孤独」の空間・時間を歌ったものが多く、結局は、そこから「あんじょう学びや」、と。

さて、このアルバム。ぼくが高校生の頃、『真夜中のダンディー』というシングルを買い、サザンの爽やかなイメージとのギャップにとまどう間もなく「いい!」とドはまりしたことから始まる。当時のぼくには『月』の良さはピンとこず(今は、このアルバムの中でも1,2に好きだが)、それでもアルバムを購入。あの頃はまだシングル盤をがんがん買っていたんだなぁ、と変なところに感心したりして。

一曲目、漫画の世界は所詮「夢」なのさというメッセージをもった『漫画ドリーム』で始まる。1994年、膨らんだバブルがはじける寸前の「醜態の嵐」の世の中を、桑田佳祐は唄う。
「みんな無茶なノリで 世は醜態の嵐
魑魅魍魎 行く東京の夜に真夜中に見た ビッグ・バンな魂」
妙な世の中を次々に唄い、「ブッダ・ジーザス…辛抱したりや!!」とは何とも桑田佳祐らしい。本当にコトバをリズムに乗せる天才だと思う。

人生のブルースを唄った2曲目。
「しゃアない」の一言であきらめ節の人生。好きな彼女にさよならを告げても悲しくないのはなぜ?ラーメン屋の親父に「ありがとう」も告げられないまま、「こうして愛はため息に変わるのだろう」。

そして『月』。孤独な太陽というタイトルと、この『月』。青白い光に照らされて歩く旅路は「嗚呼…」と。とびなれた夜も一人じゃ辛くて、他人のままで、誰かと寝る。月を見て、涙する人の姿が、今、この歳になって、ようやく染みる。
「揺れて見えます 今宵の月は 泣けてきました
嗚呼…」

『エロスで殺して』は、夜の中へ本能のままのめりこんでいく心境か?一人孤独に月夜に見せた涙はなんだったんだ(吃驚)というほど、前曲の『月』とギャップはあるが、これぞ桑田佳祐!ともどこかで思わせてくれる歌?そんなに縛られてむち打たれて、女王様って……

『鏡』はど真ん中の名曲だろう。
「冷たいドアのような鏡」。この締めのフレーズで一気に引き締まる。
「向こうが泣いたら親友同士の愛は錯綜する」、自分を見つめ、君を見つめ、「互いを嘆くような二人」は、冷たい鏡の前。君をみつめる自分を見つめ、そうして君に語ることばはきっと変わる。
「俺が死んだら闇の銀河に誰を招待する?
光の中じゃ永遠に嘘はつけない
罪深き胸の人物のために
鏡よ君に語ろう」
ぜ〜んぶ「自分」というとらえ方でも、この歌詞は深みを増す。

「生まれた時代に飛べないモスキート」。
それでも生きていかないとならない無情。この歌のテンポは、どこか「そんな時代」なのにリズムよく普通に生きているというギャップを感じる。
「いつか大空に架かる虹を待ってる
灯る蝋燭をかばいながら生きてる」
「あらぬ良識で大人達は逃げてる
遠い世界のようだけど・・・」

次のフォークソング『僕のお父さん』は、桑田佳祐が歌ったらこうなるという一曲。帰らないお父さんを思う「僕」は長男。寂しさを我慢しつつお母さんの作ったカレーライスを食べる。夜、トントンと窓をたたく雨。去りゆく調べ。お父さん、、、好きだよ永遠に、いつでも会いにきて、と。両親に贈るラブソング。「孤独な僕を見て」という歌詞が最後にぐっとくる。

そして『真夜中のダンディー』。いま聞いてもかっこいい歌だ。
無邪気に笑うことを忘れ、生まれたことを悔やんだときには、背広の中に金があふれている。世の中の汚さ?ずるさ?そんなものを知りつつ顔を背けていると、「泣きそうなこと」に直面しても、頬を伝うのは「雨」だった、と。涙も出ない真夜中のダンディー。誰が待ってる?と自問しつつ過去にすがる。
「降り注ぐ太陽が 嗚呼 影を呼ぶ
愛しさを知る程に 嗚呼 老いてゆく
またひとつ消えたのは 嗚呼 愛だった」

『すべての歌に後悔しな!!』は、マスコミで大騒ぎになった一曲。これはサザンオールスターズではなく桑田佳祐としてのメッセージなのか?この歌詞の部分がやれ誰々にむけた批判だ、なんてそんな風に聞くのではなくて、なんというか「歌が得意な猿」たちの、そういう歌だと思って聞きたい。

「壊れそうな 待ちぼうけのシャドウ」
この一文で始まる『孤独の太陽』は、アルバムのタイトルになるだけあって名曲だ。「ひとり」ということと「影」。そこに降り注ぐ太陽。賑やかそうで、楽しそうな「太陽」って、結局は孤独なんじゃないか?と。
「また他人を 裏切りそうで
出逢うことが この頃は恐いんだ
淋しさは 辛いけど
鍵をかけ 部屋の中のいる」
「真っ白な空の下
メリーゴーランド
独りでずっと廻してる」

「幸せ願うノートには
昨日の跡がない」
そんな少女の腕には注射の跡があって、太陽が燃えて消えた夏の歌、『太陽が消えた街』では、真夜中にあつまる蛾の群れの中でボレロが歌いつがれる。

『貧乏ブルース』は「貧困」な金持ち社会をきっていく。
「アートが理屈を超えない世界
文化じゃ食えない貧乏ブルース」


ここまで、重い!という印象の曲調、そして歌詞。
桑田佳祐が思いきり主張する歌のどれもが、がんがん入ってくる。


そんなアルバムの最後を、この『JOURNEY』が締めているのは、本当に素晴らしい。このあたりのセンスがいいな、と改めて思わせる。

「我行く処に あてはなく
人も岐れゆく 遙かな道
旅立つ身を送る時
帰りくる駅はなぜに見えない

大空を駆け抜けたまぼろしは
世の中を憂うように
何かを語るだろう

とうに忘れた幼き夢はどうなってもいい
あの人に守られて過ごした時代さ
遠い過去だと涙の跡がそう言っている
またひとつ夜が明けて
嗚呼 何処へと Good-bye Journey

嗚呼 何処へと Good-bye Journey」

次、逢う場所で!そうやって停止ボタンを押してアルバムを閉じてみたり。


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