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トロッコに乗る。そう聞いて、まずここ黒部が思い浮かぶ人と、京都の嵐山が思い浮かぶ人と。住んでいる場所も関係あるかな。ただ、まずもって一番有名なところは、黒部だろう。新緑の季節、まだ欅平までは開通しておらず、鐘釣駅から万年雪を展望台から見る。
窓のない客車に乗り込むと、風が心地良い。荒削りの自然が、ナチュラルハーモニーの色彩でもって、展開する大パノラマ。そこに、人間のモノ(人工物)がある。それがまた驚きになる。ダムで有名な黒部。送電する電線が「こんなところに?」と驚くほどの場所にある。この、トロッコ電車も、ここで発電した電気で走っている。そんな室井滋さんの車内放送で、なるほど納得。猿のための橋もある。綺麗すぎる水が、光の加減でエメラルドグリーンになり、遠くの山々には雪も残る。トンネルが多いのは、ここが山の中である証拠。冬の雪深い時は、発電所まで続く地下道(のような)がある。
片道、1時間半(宇奈月と鐘釣の間)。ビデオカメラにスマホに、抑えるべき景色が次々に現れる。一つひとつ収めながら、キョロキョロしながら。なので、帰りは、スマホもビデオもしまって、とにかく景色を見る。景色だけを見る。大自然の中の人工物。この驚異。「どうだ!」と言わんばかりの圧倒する感じがないのが、実にいい。なんというか、自然が自然にあって、その中で深呼吸できる時間。それを満喫するのが醍醐味だ。