給食費、No Pay?
2007年01月28日
全国の公立小中学校で支給される給食。「あ、今日はエビフライのタルタルソースや」とか、「プリンが出る」なんて日は、それだけで朝からテンションが上がった思い出。これは、これといって楽しみのない機内で、機内食を待ちわびるのとよく似ている。その学校給食が、いよいよ危機だというのだ。以前から、給食費が払えるのに払わない「人」がニュースになっていたが、その数が無視できなくなってきている。文部科学省の調べで、2005年度の給食費滞納額が22億円にも上ることが判明。さらに驚くべきは、全国の約半数の学校で、滞納があるというのだ。

給食費を払わない? 正直、僕はその理由が分からなかった。新聞、テレビ、雑誌。いろんな媒体を通して、給食費を払わない人の理由を聞いても、結局は理由なき滞納に過ぎず、払ってない人もいるから、うちも払わないというところに落ち着く。「学校の時間割に、給食が入っているのだから、義務教育の範囲。だから無料で食べる権利がある」???、、、まったく呆れた理由を挙げる「人」もいる。

僕はあえて、給食費を払わない「人」と記し、決して「親」とは書かない。なぜなら、NHKの受信料を払わない人と、程度が同じだからだ。自分の子供の成長や、「食」のバランスという重要性から考えると、毎月の給食費は、テレビの受信料のようなプラスαなものと同じであるはずはなく、払わなくてもいいなら払わないといって省ける経費ではない。それすらわからない「人」が、親である子供が、とにかく可哀想だ。

給食費はNo Payではない。払わなくていいモノでないのはもちろん、言語意のまま「成功報酬」的な類でもない。つまり、給食を食べるから払う、食べないから払わないというのではないのだ。うちの子は給食じゃなくてお弁当にするから給食費は払わない、というのは許されない。それは、「うちの子は中学受験のために、教科書の理科より塾の理科の方が必要だから、理科の時間は塾の問題集をさせる」というのが通用しないのと同じ。じゃあじゃあじゃあ、拒否できない給食に、お金を払わされるのはおかしいじゃないか、と思う人がいるかも知れない。そこが、違う。なぜならそういう制度だから。そういうルールだから、今のところ。ルールに則って、九九を覚え、遠足に出かけ、読書感想文を書いて、給食を食べる。決まりを各々の勝手な解釈で破っていては、学校という場が成り立たない。

仮に、給食制度を廃止して、欧州のようにシエスタを導入してもいい。昼休みを2時間から3時間とって、子供たちも外で働いている両親も帰宅し、家族そろって昼食を食べる。そして、また学校や会社へ向かう。そんな生活スタイルが馴染まないのであれば、弁当にしてもいい。学校に食堂を設置して、お弁当の子、食堂で食べる子、コンビニでパンやおにぎりを買ってくる子がいてもいい。そういう制度を良しとして、地域なり、学校側がそれを採り入れるなら、なんの問題もないだろう。が、現状、給食制度があって、その費用を払わないのは、どう考えてもおかしい。付け加えると、給食を廃止することは、バランスよく献立された「食」の放棄も同時に意味することを忘れてはいけない。

僕個人としては、今の給食制度は非常に良くできた制度だと思う。今回の調査で、給食費滞納者のうち、約33%は経済的な理由で支払えないというものだった。毎月、小学校なら3900円、中学校なら4500円の給食費の捻出が難しい家庭があるのは事実だろう。だが、生活保護による教育扶助や修学援助などによって、給食費の大方は免除される。つまり、払えないという人にまで払えというのではないのだ。

公平だとか平等。僕はこの言葉が、こと給食について用いられるのを好まない。アレルギーの問題もあるし、嫌いなものが出てくればやっぱり憂鬱だし、牛乳が毎日でることに、小学生の頃の僕は怒りを含んだ疑問を持っていた。みんなが同じ時間に同じものを食べるというのも少し奇妙な気もする。だけど、成長の上で最も重要な9年間、長い人生の中で、たったこれだけの期間、少しぐらい憂鬱でも、毎日牛乳が出ても、やっぱり大切なんだったと思うし、そもそも、親の立場からすれば「楽」なんじゃないかと思う。朝の忙しい時間にお弁当を作ったり、うちの子供、今日はちゃんと食べたかしら、と気を揉むこともない。月々数千円。それを滞納することで失う子供からの眼差し。決められたことにいちいち文句を言っては放棄する姿勢。なんとなく、「親」という立場を理解していないというか、OLが集まって今度の「課の飲み会」をパスしよう、みたいなことを話し合っているノリというか。よく分からないが、どうも「きちんと」した態度に欠如を感じる。

きちんとする。これは、一番難しいが重要だ。それも、きちんとした「親」の姿は、子供に絶大な影響を与える。もしかすると、そういう「きちんと出来ていない人」の影響が、学級崩壊やいじめなどに繋がっているのではないかと、疑いたくもなってくる。

とにかく、給食費は、No Payではありません。



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