マンション購入記
2012年11月27日
2012年7月7日に初めてマンションギャラリーを見に行き、11月24日に無事正式申し込むをするまでの約5カ月間。その記録を記したいと思う。

そもそも、マンションなり戸建なり、住処(不動産)というものを買うべきか、借り続けるべきかが問題だった。住宅ローンをくんで完済したとしても、マンションなら管理費などずっと払い続けるお金は必要だし、戸建でも修繕費用はかかる。であれば、家賃という形で払い続け、いつでも移動できる「自由」が欲しい、とも思った。それはご近所トラブルというネガティブなものばかりではなく、このまま東京に住み続けるわけでもないかもしれないし、海外移住という夢のような奇跡が起こらないとも限らない。そんな中での「自由」は、確保したい云々、煮えきらずにいたのが正直なところだった。そんな中、こどもの存在は圧倒的で、息子の成長の時間軸が、私を含め「家族」のスタンダードになった。

手狭になる住居スペースを確保するための引越し、そこで払う家賃の高騰。であれば、分譲仕様のマンションのデザイン・利便性・エコのパフォーマンスに賃貸マンションのそれらは見劣りがした。

ということで、購入することにした。

とはいえ、終の棲家という一昔前の不動産感覚ではなく、あくまでも売れる貸せるという不動産価値。今の生活スタイルをできるだけ変えずに、つまりは都心までの距離を保ちつつ「場所」「建物」「値段」の最大公約数的な最高妥協ポイントを探り始めた。

売主、施工会社に着目し、エリアはゆるく絞りながら、マンションと戸建の見学に回る。7月、毎週末に予約を調整して物件を見て回った。それぞれのマンション・戸建にはターゲットとする顧客像があり、コンセプトもまちまちだった。二重床・二重天井、天井の高さ、ベランダの広さ、眺望、周りの環境などなど、絶対に譲れないポイントを夫婦で出し合い、○×よろしくもう一度見たい物件を絞り出す。見れば見るほど目が肥え、イメージが具体的になり、絶対譲れないポイントも変わってくる。当たり前だが、場所も建物も値段もすべて満足な物件はない。それは探し出す前から分かっていた。が、あきらめず、面倒がらず、足を運ぶことを楽しみながら、出来るだけ満点に近いモノを。そうやって物件周りを続けた。

駅から徒歩10分圏内で最新の設備を備えつつデザインも素晴らしい。しかし、大通りに面していたり、近隣住宅のベランダに「建設反対」なるのぼりがあったりするマンション。23区内では考えられない広さを持ちつつ、劇的な安さ。しかし、駅から自転車で15分、さらに高速道路が近くに通っているという物件。駅から遠いがワイドスパンの間取りで開放感があり。しかし、しっかりと町内会などが存在しているような住宅街に突如出来たような、近所のスーパーもなんだか古びた印象があるマンションだったり、と。○と×がせめぎあう物件が続いた。7月は、結局、これ!という物件に巡りあえなかった。

勝手な印象だが、「多く見ると分からなくなるので、2〜3軒みたらスパッと決めたほうがいい」という売主は、自信がないか引け目を感じているような気がし、「じっくり見て、選んでください」という売主には自分の物件にそれだけの自信があるように思えた。

8月、夏真っ盛りの中、こどもをつれて家族で見て回る日々は続く。この頃になると、モデルルームはどこも似たり寄ったりで、オプションだらけでよく分からないという「うわっつら」だけの見学から、もっと深く、決定的な収納の作り方や導線を考えた間取り、窓の取り方に配管・配線、壁の高さ、床色のセレクト種に至るまで、考えて造られているところは、ぜんぜん違うということに気が付いてくるようになる。営業担当者にぶつける質問も鋭くなる。第一期販売で、まだ不慣れなところと、二期・三期と時間がたっている物件では営業の方の「知識」もぜんぜん違う。そもそも、今の時代、「人」で買うわけではなく「商品」で買うのだが、やはり、これだけ大きな買い物になると「人」の印象で商品まで変わる。それは、商品の魅力を100%伝えてくれるか否かの問題で、「無い」魅力は、もちろん言えないのだが。

8月が終了した時点で、戸建はやめにした。東京市部までエリアを広げると、建売の戸建なら23区内のマンションよりも安い。が、やはり新築分譲マンションを見ていると、建売戸建は広いがチープに思えた。隣との狭さも気になる。何より、都心から遠い駅で、さらにその駅から遠いというのは、私たち家族の生活スタイルと少し違った。

この段階に来ると、夫婦で家族設計を話しながら何度も喧嘩した。が、お互いがあきらめなかった。

8つの物件を見て回って、気になったのは1つだけだった。収納率が見事で、洋室なのに押入れなみの収納力。駅からも近く、周りにはスーパーが3つもある物件が最終候補となった。予算が当初より徐々に上がっていく。それでも、それを上回る魅力があるかどうか。絞り込んだマンションギャラリーに何度も足を運ぶ。モデルルームを見て、実際に検討する間取りで計りなおし、メリットとデメリットを足し引きする。

9月。ほぼ絞り込めた物件を残しつつ、ちょうど10軒目のマンションギャラリーを見に行く(1軒は見学当日に急用でいけなくなったので、正確には9軒目)。ここで、バチッとはまる物件に出会えた。これまで、ああだこうだとこねくりまわした利点と欠点。そんなものを凌駕する魅力あるマンションだった。低層、第一種住宅専用地域、周りの環境、敷地の使い方、つまりはコンセプト。すべてが驚くほど私たちに合致した。

ここからは、この物件に絞る。色々と用意された説明会やイベントに参加。最初に担当してもらった方との馬が合わず、交代してもらったのだが、その対応も素早かった。そして、かわった人が気持ちいいほど馬が合った。1軒に絞ってからも細かい点で色々と懸念が出てきては、その都度、膨大な資料を示しつつつぶしてくれた。ここにしよう! そう決めてからもハードルは高く、当初6倍!という倍率がついていた。他の部屋に移るかどうか。状況を毎週聞きながら、こちらの意思も伝え、様々な営業の方の調整があって、無事成約した。

運もあったと思う。決めたら決めたで、ぐちゅぐちゅと細かい懸念も残るが、建設予定地へ赴き、9月には何もなかったところに骨組みが現れ、近所を歩き、そうしているうちにじんわり高揚する気持ち。これ、だと思う。この5カ月間、妥協しなかった結果だとも思う。巡り合わせも良かったと感謝する。

振り返ってみて。まずマンション選びは、エリアをゆるくしぼることが必要で、それ以外のしめつけは設けないことが大事。見れるだけ見るというロングスパンの構えで、その期間、途切れることなく追い続ける姿勢も大切。色んなことをできるだけ聞いて、見て、その中で自分たちにとって「重要なものだけ」をうまく取捨選択する。夫婦でよく話す。そんなところがポイントかと思う。あとは、ある程度のエリア(不動産価値)と値段が見えれば、早いうちにローン審査だけ通しておいて、自分たちの融資枠を知ることも重要だ。

最終的には、安いといってもローンは払う。なら、払い続けるに足る物件かどうかということに尽き、そんな物件に出会えるかどうか。時代背景として、損得(減税・金利など)はあっても、買いたいときが買い時といった姿勢が必要だ。

今は住宅ローン減税あり、変動金利が安め。今後、マンション建設の人材が東北地方に集中しているので人材確保に費用がかかることと、資材の高騰、消費増税もあることを考えると、買い時だと謳うにはそれなりの理由もあった。

5カ月間。私たちが当初の希望から妥協したのは、予算と入居時期だけだったように思う。今の賃貸マンションの契約更新までに入居したかったが、探し始めたのが遅すぎたようだ。その時期に入居しようとすると、二期・三期販売の物件になり、成約済みのバラマークが「いい部屋」には付いていることが多い。入居しようとする10カ月前ぐらいから探し始めるのがちょうど良いのかも知れない。

「ど」が付くほど、建物についても、用地についても、銀行融資についても素人だった。一つずつ聞いたり見たり、常に新鮮な気持ちで何でも見聞きするという姿勢が、理解した上で良いモノを選ぶという結果になったのかも知れないと自負している。

書き漏れていることもあると思うが、これがこの5カ月間の記録だ。今は、住み始める家族を想像すると楽しくなり、家具などを見て回ろうと企んでいる。入居はかなり先だが。



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