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マリメッコ展
デザイン、ファブリック、ライフスタイル

marimekko - Design, Fabric, Lifestyle
@Bunkamura ザ・ミュージアム
2017年02月09日

一冊の、良質な本を読んでいるかのような展覧会だった。始まりから終わりまで、館内の解説文を読んでは、ちょっと見上げてファブリックを見る。デザインとは、パターンとは、量産すること、色をつけること。「マリーの洋服(マリメッコ)」が、アルミ・ラティアによって小さな一歩を踏み出した時、今でこそ、デザイン王国となったフィンランド(ヘルシンキ)は、まだまだ後進国。パリの情報も、現代のように瞬間に入ってくるわけではなく、洋服を作りたい、と思っても、まずはデンマークへ、そしてパリへ、出向いては、色んな刺激を受けて、そこでも模倣はせず、あくまでも「パターン」にこだわったマリメッコ。デザイナーが集まり、そして、ラティアに見いだされ、それを生産し、広告する。広告・宣伝の重要性を知っていた、元広告代理店育ちのラティア。マリメッコ初の正社員デザイナー、ヴォッコ・ヌルメスニエミが定番となるパターンの図案を描き(この図案と、実際のファブリックが並べて展示されているところが、本当に興味深い)。

そして、今やマリメッコの代名詞、「ウニッコ」を生み出したマイヤ・イソラのコレクションへと続く。花柄NGというラティアにOKを出させたウニッコ。確かに、これだけパンチ力のあるパターンもないな、と思わせる。その後、時系列にマリメッコの歴史をたどりながら、日本人のデザイナー・脇坂克二と石本藤雄のコレクションへ。ニューヨークで大流行し、マリメッコを国際的なブランドに押し上げた(その一躍を担った)脇坂克二の「ブーブー」というパターン。そして、日本の美意識を持ち込み、パターンである以上、永遠に続く柄が理想的と語る石本藤雄の「タイガ」など、時折挟まれるインタビュー映像を見ながら、立ち止まる感じも、何とも素晴らしい演出だった。ちなみに、京都で展開する脇坂克二の「sou.sou」については触れられていなかった。国際的になったマリメッコ。洋服だけに止まらず、ライフスタイルを創造しようというラティアのコンセプトに、躍進を続ける。が、ラティア亡き後、シンプルを好んだキッルスティ・パーッカネンの時代など、少し下火になる時代も迎える。大きくなった会社が、カネ(資金)という車輪でどんどん進んでいく様子が窺えたりもする。

そして、原点回帰。創業当時や、創業して間もない頃のパターンを持ち出し、いろんなモノに適応したり、パターンを活かすために、極力線の少ない、カットの単純なデザインの洋服へと。人気を盛り返す中で、新しいパターンも生まれていく。ガラス製品の「スカット マッカラッラ(ずり落ちるソックス)」、食器の「オイヴァ」「シィールトラプータルハ」。ファブリックパターンでも、「ラシィマット」や「クースカヤスカリ」など、フィンランドを代表する、世界のデザイン会社の地位を不動のものにしている。より単純で、永続的なパターン。そこにある芸術性。図案の段階で、何ら制約のない、デザイナーが自由に創造し提案できる雰囲気がマリメッコにはあり、そして最も重要な、「これこそ、いい!」という「眼」が、しっかりと備わっているんだな、と、一時間半をかけて、ゆっくり、楽しんだ色と形とパターンと芸術の世界の終わりに、そんなに風に思えた。