股旅
奥田民生(1998年発売)
あくまでドライブ
ツアーメン
またたびをする
恋のかけら
リー!リー!リー!
股旅(ジョンと)
遺言
海猫
手紙
さすらい
イージュー★ライダー’97
例えば大学生が数人でレンタカーを借りて、わいわいがやがやと旅するなら、このアルバムは趣が少し違うかもしれないが、確実に「旅」のお伴に最適な一枚だと私は思う。
ゆったり流れる風景を見ながら、おかしな屋根や、不思議な看板なんかを見て、こっそり笑ってみたりするとき、イヤホンから流れていてほしい音と言葉が詰まっている。
ついてくる黄色い太陽に「ついてくるな」といった後で、「はるかな道を独特の道を 選んだと行くのだと」きめた一人旅。ハンドルを握りながら黄色い太陽に「みてておくれよ」と。そして「俺」の太陽についておいで、みてておくれよ、と。一曲目の『あくまでドライブ』はゆったりとして確実で強固な何かを感じる曲だ。
曲調は変わって、少し軽快に「いろんな場所で 音楽をやりたい いろんな人の 目の前でやりたい」と歌いだす『ツアーメン』は思わず口ずさんでしまう一曲。
『またたびをする』は、まだまだ行くぞ、やってやるぞ、と。「かなり やぶれ かぶれ ばかたれ / 花は咲いたか」。
私のイメージで、これぞ民生ソングというのがあるなら『恋のかけら』がそれに当たるかもしれない。旅の途中で見かけた美しい人が、木のかげで泣いている光景。自分自身の「なつかしい日々と ステキな君」を思い出している。
空耳で草野球してるおっさん?を歌った名曲『リー!リー!リー!』、アルバムタイトルにもなっている『股旅(ジョンと)』は、アメリカの西部の、何処かでジョンと、「前進前進前進」の旅をする。
「嘘つきの僕はきっと 死んでしまったらきっと やっぱり地獄に落ちるよね」。『遺言』はザ・一人旅ソングだと思う。一人で旅していると、こういうことを、考えてしまうものだ(私の場合)。
「何をしに来たの する気なんかあるの ないので 帰ろう」。『海猫』はずっと旅してきて、ほっとゴールを見つけたのか。ここらで、帰ろうかという一曲。
「ひまがあれば」手紙を書いている僕の、どこか未来を描いた曲。「あなたと僕が もしも一つになれたなら 若草色をした りっぱな家建てましょうね」。『手紙』は、これからを思わせ、次へと続くシングルカット2曲へバトンを渡す。
『さすらい』は、本当に名曲だ。「まわりはさすらわぬ人ばっか 少し気になった」という名句。「海の波の続きを見ていたらこうなった」とさすらう一曲は、ザ・旅人ソング。
こちらも名曲『イージュー★ライダー』のリアレンジ97年版。三十代も行くぞと歌った曲を、ゆったり力強く歌い上げるこちらは、旅のアルバムを締めくくるにぴったりだ。
私がまだ二十代、大学を卒業したばかりの頃に聞いた時と、今になって聞くのと、こうも印象の違うアルバムも珍しい。するめソングというのがあるのであれば、そんなアジのある曲で詰まっている。
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