莫干山路50号 M50

莫干山路50号/M50 
Shanghai, China

(Moganshan Rd.モーガンシャンルーにて)

モーガンシャンルーへは、メトロ3・4号線「中潭路」駅から徒歩10分

→Secenic Spot topへ

世界の都市、例えばニューヨークやベルリン、ロンドン、日本だって東京や大阪などで見られる現象がある。活動に没頭できる「場」を求める若いアーティストと、そんな彼らに注目する「お金の出所」が出会う。そうして一つのエリアができる。不思議なことに、倉庫群というのが相場だ。廃墟と化したような古いエリアを、現代アートで彩る動き。好きこのんで?不便を楽しんでる?ようにも思える彼らのパフォーマンスは、だからこそストイックで惹きつけられもする。

アトリエ兼展示スペース。買い付けにくるキュレーターと交渉して一旗揚げてやろうという企て。上海で言えば、この莫干山路50号(モーガンシャンルー50号)がそれにあたる。M50で通じるらしい。かつて倉庫群だったこの一体を、企業が出資してアーティストの活動の場として提供。資本主義で育ったアメリカやイギリスの若者とは違い、そこは「ど」が付くほどの共産主義社会のアーティストたち。笑顔や泣き顔の表現にも「それっぽさ」がところどころに感じられたり……。「赤本」を手玉にとった作品や、顔の三分の一ほどが口で、その大口から「わっはっは」と聞こえてきそうな、暗い笑顔。なんとも絶妙に、溜まったモノを吐き出したい衝動が感じられる「一枚の絵」。

巣、という言葉がぴったりきそうなほど入り組んだM50を、あてもなくブラブラ歩いていると、なんというのか、パワーが真っ赤に燃えるでもなく、ガスバーナーの「青い火」の部分、つまりはそこが一番温度が高くて、回りの「酸素」に十分に触れていない「勢い」みたいなものを感じる。絵画あり、彫刻有り、書、ありだ。敷地内には画材屋もあり、おそらくは昨日あたり描いたのだろうペインティングが壁にかけてあった。その回りには、絵の具が散らばっており、それは目が覚めるほど黄色い絵だった。

莫干山路には、この「50号の倉庫群」に並んで、ギャラリーやカフェなんかも並んでおり、一緒にゴミ処理場もあるのが面白い。壁にはペインティング(落書き)があり、「現代アート?なんじゃそりゃ?」といわんばかりの、おそらくは元々そこに住んでいたのであろう人達の営む日常品屋も同居する。長さにしてどのぐらいだろう。端から端まで歩いても5分?10分はかからない。そういうエリアが、今、注目を集めているのだ。

ソーホーにいたNYCの若者が、トライベッカへ移り、そしてミートパッキングエリアに逃げたように、はたまたベルリンの若者がライプチヒに移ったように、このM50も「家賃の高騰」が押し寄せるかも知れない。が、今のところ、おそらくは安い家賃でアトリエを借りて、「好きな作品」を作り続けているのだろう。彼らが、「売れるためのものをつくる」前に、一度は見ておきたい。

まだ午前中だったからか、アトリエにいる彼らは新聞を読んだり、コーヒーを飲んだり、猫と遊んだり。まったりしていた。その中の一人の女性と話すと、「好きなものをつくって、誰かに好きって言われるのは、とても幸せ」とかなんとか、そんな意味のこと言っていた。いいなぁ、そういう感じ。

入り口?にあるカフェでカプチーノなんかを飲みながら、M50 Guideという小さな冊子を見ていると、なぜか知らないうちにドキドキしてきて、気分が高まったように、また、ぐるりと敷地内を一周してしまった。