美術館

暑すぎない、寒すぎない、考えすぎない、ハラハラしない、眠すぎない。
広すぎない、狭すぎない、ありすぎない、なさすぎない。
結局、バランス。
それは、例えばゲルニカのための回廊式空間でも、サモトラケのニケの
ための緩やかな階段でも。エントランスのロゼッタストーンでも、ガラスの
床の、その下のミイラでも。作品のための空間と、空間のための作品。
やっぱり、バランス。

僕は、美術館の中央で、または隅っこで、時々は最上階で、ホッとする。
雨でも晴れでも曇りでも、決まって残り20ページになった本の続きのよう
な、なんというか最後に向かってドッと気分が盛り上がっていく、その一
歩手前のような、そんな充実感の中でふんわり満たされる。腹、八分目。
これ、この感じ。
今日見たピカソの、ゴッホやシャガールやレンブラントの、続き。
直線や曲線やギザギザの、理由。意味不明で跳びこんできたカンディス
キーの鋭角。窓の外が普通で、人と車と原色と。騒がしくて。
深く沈めた腰が、なかなか動かない美術館で、僕はホッとする。







国立新美術館にて