「現代の都市空間で発達した視覚芸術を指し、
一般的には、壁や建物、道路や橋などの
公共の場所にアートを描くアーバン・アート」(公式ホームページより)。

今回の展覧会では、
グラフィティ・アート、ストリート・アート、
ポスター・アート、ステンシル・アート、
モザイク・アートなどが大集結。

ミュンヘン中心部にある
Museum of Urban and Contemporary Art(MUCA)からの作品が、
これでもかというほどに並び大満足な内容だった。

現代アートにあるような「小難しさ」はアーバン・アートにはなく、
政治的皮肉や強烈なメッセージ性をわかりやすく大胆に描き出す作品が多い。

一昔前まで落書きとされたものを
「芸術」にまで高めたアーティストたちの足跡をたどりながら、
時代を映し出しているのはもちろん、
場所や土地柄(国や都市)によって色の使い方などの違いがあり興味深い。

ただただかっこいい、そんな作品が多かった。

まずは有名なカウズの作品群から。
アメリカ・ニュージャージー出身のデザイナー。
かわいらしいキャラクターから発せられるメッセージ性が面白い。



「4ft Companion(Dissected Brown)(カウズ)」








「M4 / M7 (カウズ)」






「Running Chum(カウズ)」






「KAES BRONZE EDITIONS #1 - #12」






次に、アメリカ・チャールストン出身のシェパード・フェアリーの部屋。
ストリート・アート、グラフィック・アートのアーティストとして有名な彼の作品は、
なんといっても色と題材。そのセンスがたまらなく素晴らしい。



「Obey with Caution(シェパード・フェアリー)」






「Jimi Hendrix / Peace Goddess / Bob Marley
MLK JR / Big Brother Is Watching You /
New World Odor(シェパード・フェアリー)」






「Berlin Tower(シェパード・フェアリー)」






パリ出身のINVADERは、80年代のビデオゲームに影響受けた作風が面白い。

「Rubik Albinos(インベーダー)」






「Rubik Arrested Sid Vicious(インベーダー)」






「Space One (Silver) / Space One (Gold)(インベーダー)」






アメリカ・コネチカット州出身のスウーンは、
自分の作品が誰かの所有になることや
美術館に飾られて限られた人にしか見られないことを嫌った。
だから、公共の場に作品を置くようになる。
どこかネイティブアメリカンのような、
ドリームキャッチャーのような雰囲気が好きだ。


「Ice Queen(スウーン)」






「Silvia Elena(スウーン)」






ストリート・アートの先駆者とされる
カナダ・バンクーバー出身のリチャード・ハンブルトン。
特に、「シャドウマン」はグッと引き付けられる。
1980年代のニューヨークの街並みにあったことを想像しながら見ると、
より迫って来るものがある。



「Shadowman(リチャード・ハンブルトン)」






「Purple Shadow Heads(リチャード・ハンブルトン))






「Five Shadows(リチャード・ハンブルトン)」






「Golden Shadow Toorso(リチャード・ハンブルトン)」






破壊して創造する(destroying to create)、
という信条で作品を生み出すポルトガル・リスボン出身のヴィルズ。
シンプルにカッコいい作品が並ぶ。


「Dispersal Series #14(ヴィルズ)」






「Acumen Series #02(ヴィルズ)」






金属板に酸によるエッチングで創り出した「Dwindle Series #03」






ヴィルズから一気にカラフルになって、
サンフランシスコ出身のバリー・マッギーの作品群は、
個人的に大好きな世界観だった。
木製とカラフル、金属とカラフルという調和が絶妙で、
色の配色も見事だった。


すべて、無題














続いてJRの部屋。
わが家もかつて、JRの展覧会で
巨大な顔アップのポスターを作った。
それらが世界の街で飾られている。
パリ出身のストリート・アーティストであり写真家。


「28ミリメートル、ある世代の肖像、強盗、
JRから見たラジ・リ、レボスケ モンフェルメイユ 2004(JR)」






ブラジル・サンパウロ出身のオス・ジェメオス。
多彩な色、形、素材、メディアを使った作品を創り出す
一卵性双生児の双子。
コミカルでユニーク、明るい色使いが印象的だ。


「Untitled Guiter(オス・ジェメオス)」






「Rhina(オス・ジェメオス)」






そして、最後を飾るのは言わずと知れたバンクシー。
イギリスはブリストル出身の彼は、
ストリート・アーティストであり、
政治活動か、映画監督、画家と様々な顔を持つ
世界的に有名なアーティスト。
正体は不明のまま。
今回はステンシル・アートだけではなく、
彫刻や絵画など興味深いものが多かった。


「ディズマランドのキャラクター(バンクシー)」








「Forgive Us Our Trespassing(バンクシー)」






「Vandalised Oil(バンクシー)」






「Palestine Wall(バンクシー)」






「Kate (Grey)」






「Wrong War(バンクシー)」






「Welcome Mat(バンクシー)」






「Bacchus At The Seaside(バンクシー)」






「Grappling Hook(バンクシー)」






「"Are You Using That Chair?"(バンクシー)」






「Radar Rat(バンクシー)」






「Barcode Shark(バンクシー)」






「Paranoid Pictures(バンクシー)」






「Fragile(バンクシー)」






「Love Is In The Air(バンクシー)」






「Bullet Hole Bust(バンクシー)」






「Girl with Balloon(バンクシー)」






この大充実の展覧会の最後を飾るのは、
2018年、ロンドンのサザビーズで開催されたオークション。
そこで「Girl With Balioon」のプリント版が落札された直後、
バンクシー自らが仕掛けたシュレッダーが作動して、
作品の半分を切り刻んだことで話題になったもの。

タイトルに「Girl Without Balloon」とついている。

もうあの「事件」から6年。
目の前に現れると、縦に入った切り込みが、
妙な味となって作品の価値を上げている(ようにも思えた)。








アーバン・アートのストリート・アーティストは、
美術館に「鎮座」する作品に対抗するように自由にのびのびと、
なんでもありなところから、芸術として確立させた。

そこには、不満や不足、貧困など、
いろんな「人生」がバックボーンにあり、
だからこそ、骨太に、見る者を魅了するように思えた。



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The collection of MUCA is coming to Japan!
MUCA(ムカ)展 ICONS of Urban Art ~バンクシーからカウズまで~

@森アーツセンターギャラリー(東京)
2024年4月28日(日)