中之条ビエンナーレ @群馬県
2011年09月18日

温泉郷+アートの祭典

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中之条伊勢町エリア

四万温泉
エリア
旧第三
小学校

温泉町と現代アート。この組み合わせにグッと来た。2年に一度開かれるビエンナーレ。今年で3回目だと言う。中之条という、群馬県の高崎より前橋よりもっと北。そこで行われる現代アート展に、早朝の電車で行った。
本来なら、東京駅から四万温泉郷までは直通のバスがある。これが最も安く、楽で速い。から、三連休ともなるとすぐに満員になる。なので、新宿から大宮経由で特急「草津」に乗り込み、約2時間半。晴天の中之条駅に到着。この日は、たまたまSLが走る日?らしく、途中の駅ではカメラを抱えた人達がたくさんいて、あ、ついでに「草津」もおさえておくか、程度の人たちのレンズがぼくの乗った車両にも向けられる。ま、これも休日の光景だな。

さて、このビエンナーレ。若手の作家を中心に、有名人から駆け出しのアーティストまでが、一つの町をまるごとアートの場にしている。大きくは6エリア。ゆっくり見て回ると4日から5日はいるんじゃないか?という規模で、ぼくはとにかくポイントだけを抑えて回ることに。
まずは中之条駅から徒歩圏内に広がる「中之条伊勢町エリア」。駅のすぐ側に吾妻通運のビルがあって、そこがインフォメーションになっている。いろんな作家がいろんな作品を売っていて、それはそれは挑戦的価格。でも、一つひとつに味があるから仕方ない。この吾妻通運の倉庫で展開される蓮の桃源郷。真っ暗な室内に特殊ライトで光る蓮の花と葉が宙に行く世界は、とても素晴らしい。晴天の暑さに負けじと坂道を歩くと、町屋や倉庫、木材所などに数々のアートがあり、総合インフォメーションになっているつむじカフェに着く。おしゃれ=アートが成立するなら、ここは一見の価値あり、だと思う。

車がないと生活できない田舎町にあって、路線バスは本数も少なければ料金も高い。四万温泉エリアにこそ「温泉郷+アート」があると思い、路線バスで移動する。山道をどんどん進むバス。片道900円。路線バスでこんなに払ったのは初めてかも知れない。が、他に交通手段がないから仕方ない。し、それだけ払っても行く価値はある。車がこれほど必要だと思ったこともない。

この四万温泉エリアには台風で作品が流されてしまったらしい渓流露天風呂近くの作品(山口露天風呂)や、中屋を丸ごと作品で覆い尽くした場所、神社や小径までにアートが溢れる。フライヤーの表紙を飾る渓流越しの森の中に展開される動物パネル。これは確かに見事だった。
そして、メインはやっぱり廃校の小学校を丸ごと会場にした「旧第三小学校」。木造の校舎が醸しだす独特の雰囲気を、そのままアートにする作品の数々。階段にはレースがかかり、教室には土を盛った山がある。自然溢れる窓の外、山の音に耳を傾けるだけの小さな椅子が教室の真ん中にポツンと置かれていたり、音楽室ではワインオープナーが並べられたオーケストラが。体育館では、「極地体験」なるインスタレーションで、広い体育館の中に細い糸がつり下げられている。のを探す。という作品。ホワイトアウトに近い感覚で、必死に探してみる。F氏の研究室は、女性ならはまるんじゃないかという「可愛いアート」が。などなどいろいろある中で、個人的に一番だったのは、梅木隆氏の「GLASS+LINE」だった。床に敷き詰められたフカフカの絨毯に、窓には三原色の細いラインのフィルム。日光によって教室の中の色が変わる。まるで雲の上にいて、非日常。それを体験させてくれる。
アートを見て刺激され癒されたら、足湯につかりながらアイスコーヒー、なんてことが可能なのが実にいい。四万温泉郷までくると気温もぐっと低くなるし、渓流近くなのでマイナスイオンもたぶん豊富だ。このアート展を知らずに温泉に着た人たちももちろん多く、「へ〜こんなのやってるんだ」的な人と、東京からわざわざ「アートを見にやって来た人」。この混在も、何だか「をかし」かった。

今度は是非、旅館に一泊して、夕暮れに灯るランプを見ながら、そして山の音を聞きながら露天風呂に入りながら、アートに浸りたい。そんな風に思った。