ならの町並
例えば「町家」が流行し、古とモダンをミックスさせたカフェが増えた。掘り炬燵で少人数しか取らない店はそれだけで「いい感じ」がした。が、ふと思う。わざわざ造られたものの中には、どこかそれっぽい嘘があり、「こんなんがええの?」と地元の人たちが言うような「普通」が、やっぱりとても良い。京都旅行が大ブームとなり、次は「奈良」だと言われて久しいが、きっと近々やってくるのは間違いがないと思う。奈良には「空」があるから好きだ。例えば、回廊が四方を囲い、本殿へと繋がる場合、中央に立つと低い建物のバックには常に空がある。京都にはそれがない。それがないがゆえに景観までをも取り入れた庭園(例えば天龍寺など)が魅力でもあるのだが。
景観を保存し残そうと叫ぶのも結構だが、つまり一番魅力的なのは、わざわざ「残す」のではなく、自然に「残る」ものであり、いつまでも変わらない理由が、イコール魅力なのだ。遺伝子のバトンをつないできた「日本人」、今も昔もホッとする「場所」は同じなのだ。