NO MAN'S LAND
創造と破壊@フランス大使館−最初で最後の一般公開

2010年01月30日
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聴覚(音)、視覚(色)、感触(肌触り)。時には「作業中」であるためペンキの刺激臭(嗅覚)まで漂うアートプロジェクト。それがこのNO MAN'S LANDだ。

1957年、ジョゼフ・ベルモンが設計したフランス大使館旧庁舎は取り壊され、跡地には集合住宅が建つ予定。その破壊の前に、創造を。それが今回のプロジェクトの趣旨だという。隣に完成したジャン=ピエール・デルプッシュ設計の新庁舎は、なんとも現代的で、その対比が実に面白かったりする。大使館内部をくまなく見られる機会という意味においても、今回のプロジェクトは興味深くもあった。半世紀という年月。実際に使われてきた歴史ある建物は、通路や階段が狭く、一つ一つの部屋が「区切られすぎている」。そんな一つひとつに時代の流れを感じたりもする。

参加するのはフランス人、日本人、日本在住・フランス在住の若きアーティストが中心。作品のほとんどが現場で制作され、事務室、廊下、資料室、階段、地下室、中庭など屋内外のあらゆる空間で、あらゆるジャンルの創作が見られる(フライヤーより抜粋)。

桜の墨絵。もともとは桜の木々が美しかったが、新庁舎建設のために切り倒された。フランス人アーティストは、見学するぼくに片言の日本語で訴える。色紙を切り取り好き勝手に貼っては未完成のまま進行していくアート、白いバルーンには見学者がカラーペンでメッセージを書く。見学に着た人は気軽に作家(アーティスト)と会話ができる(スタッフとは別の名札を首から提げているのですぐに分かる)。また、「完成品を展示」するという展覧会から一歩進んで、創作中のアートにも触れられるというのが大きなポイントだ。現在進行形のアートを見る。上海のM50や大阪の堀江にあるような、アトリエと展示場が一体化したような、そんな「動きのある」空間も素晴らしいと思う。

治外法権の元、日本にありながら日本ではない大使館。ついこの間まで、厳重警官の元で、「フランス」であった空間に、「NO MAN'S LAND」、誰のモノでもなく、表現は自由だとする試みなのだろうか。

デジタル画面のテレビが木々に埋もれる(花代作)。それは、森を破壊し進化した文明の利器が、再び木々に覆い潰されているようにも見て取れる。リリアン・ブルジャは、小さなバスケットゴールを作り、バスケットボールを印刷した紙を何枚も用意した。見学者はそれをクシャクシャに丸めてゴールに向かって投げ入れる。とても面白い「作品」だと思った。プラプラックス(日本人アーティスト4人)は、映り込む影絵の街並みの中に、見学者が参加して一つの完成形を提示する。

全てが壊されるアート。最初で最後のチャンス。一期一会。その出会いから膨らむコト・モノ。なんだか、昨日より今日、より明日と動いていく姿が、これまで見た展覧会とはひと味もふた味も違った気がする。

上は朝鮮半島を南北に別つDMZ(非武装地帯)を写し取ったもの。民間人立ち入り禁止地区のノー・マンズ・ランド。←左は、無機質なシルバー一色のオフィス。何もかもが金属の冷たさで覆われているよう。