小津安二郎 青春館 三重県・松阪市 2006年1月9日

『東京物語』で生・死の問題を、家族という構図の中で描いた名監督・小津安二郎。この映画は、イギリスの映画雑誌「Sight & Sound」で世界映画史上のトップテンに二度も選ばれています。
(1992年第3位、2002年第5位)

そんな小津安二郎が9歳から18歳までを過ごした松阪市愛宕に、この「青春館」はあります。学校までは数十分という場所ながら、周りには風俗店が溢れ、「大人」の歓楽の中で少年・小津は「大人」を真似します。とにかくやんちゃ坊主。酒にタバコに外国映画に。浪人中にも映画三昧だったとか。
反面、ものすごくマメで、見た映画の記録は詳細に残し、毎日日記をつけていたといいます。写生は見事で習字にも小学生とは思えない「巧さ」があります。田舎町の、ちょっと大人な雰囲気の中で、勉強よりも興味のあることにまっしぐらな少年。草むらに寝ころんでみた景色が、「ロー・アングル」を生んだとも言われています。

入館料100円。それだけ出せば、彼の貴重な日記や映画研究会「エジプト・クラブ」のスタンプなど、小津を熟知している人にも、名前だけはかろうじて知っているという人にも、満足できるモノが揃っています。

スタッフの方曰く、確かに晩年の「東京物語」から「秋刀魚の味」までは円熟を極めているが、トーキーの前、サイレント映画のフッと笑えるコミカルを、または、松阪の田舎町で夢見た広大なアメリカ映画の影響を、気楽に見てはどうか、と。
DVDで全集が出たりと、小津安二郎を見直すには良い時期なので、ぼくもさっそく見てみたいと思います。

卒業写真で、厳格な教師陣が最前列に座って「構える」中、小津は最後列で友達と肩を組んで写っています。この写真を見て、「あ〜、小津っぽいな」、と思えるようになるまで、徹底的に小津安二郎を知れる、記念館です。

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