今回は番外編で、北陸は金沢にある鉄板焼きステーキの名店「六角堂」を。ひがし茶屋街から坂道を上った高台に店を構えるこちらは、加賀料理の料亭旅館「浅田屋」が経営。ステーキといえば六角堂とこの辺りでは言われ、質のいい肉が、プロの焼き加減で味わえる。お店に近づくと薫るガーリックがたまらず、空腹で近づくと殺人的だ。

新館ができてから、旧館はその雰囲気を（つまりは古き良きステーキハウスの様相）濃くしているように思う。案内されたのは、店内の大カウンターから間仕切りされた鏡の間。コックが鉄板の前で、肉の焼き加減など（体調も聞いてくれる）会話の中から導き出して、油をしいたらスライスガーリックを焼き始める。ここで、もう、グーグーと腹はなる。

いただいたのはランチ。ステーキコース。サラダ・ご飯・味噌汁・香の物付にメインの肉を選ぶ。「特選黒毛和牛」のヒレとロースを頼む。息子はロース、もうロースはきつくなった私はヒレ。焼き加減はミディアムにした。6名でいったので、肉が６つ並べられる。すごい。旨いこと確実なり、の顔をしている。

まずは前菜、そしてサラダ。そこに焼いた（というか多めの油でフライしたような）スライスガーリックが皿に盛られる。サラダとスライスガーリック。この愛称がいい。ドレッシングも、お肉屋らしいパンチ力のあるもので。サラダが非常にうまい。公家文化の京都と武家文化の金沢。なんでも「京」をつけるのと同じく、ここでも「加賀野菜」とでも呼ぶのか？なんでもいいけど、おいしい。そして、焼いて、すこし寝かして、ササっと一口大に切られるステーキ。見ていて気持ちのいい手さばき。これも料理の一つになっている。完全に手さばきを「見」て、焼ける音を「聞」いて味わっているのがわかる。

肉は、とてもアジアンテイストなソースと、西洋わさびを添えたタレの2種類でいただく。ごはんも味噌汁も、漬物も、なんて完璧なハーモニー。箸は止まらず、肉がなくなっていくのがもったいないが、それよりも口の中でとろけるハーモニーにやられる。150gで、ひとり10,800円。値段だけはある美味。いや、これが銀座なら、もっと高い。と、思う。丁寧にかつ大胆に提供されたステーキを食べたら、席を移動して、ゆったりとコーヒーとマカデミアナッツのバニラアイスをいただく。これぞ至福の時。