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マンハッタン=摩天楼として、スカイスクレーパーの高層ビル群は、例えばブルックリンの川沿いから眺めると爽快だったりする。そこに「砂漠の」が付けば、ラスベガス?と想像するかもしれない。確かに、砂漠の中に、あれだけのホテル群を築いているラスベガスは、「砂漠のマンハッタン」とも言える。とにかく、マンハッタンという言葉には、どこか「人間が創り上げる美景」というニュアンスがあり、それを、8世紀、9世紀の頃から存在していたと聞けば、驚きだろうか。嘘だ、と思うか、「摩天楼っていってもあれでしょ、それに近い何かでしょ」と否定的に肯定するか。
今や、ちょっとした「旅」好きなら誰でも知っているイエメンという国(相当な数の雑誌や本が特集をしているので)の、シバームという街の旧市街。そこに、正真正銘の砂漠のマンハッタンが存在するのだ。砂漠という過酷な自然の中に、マンハッタンという人工物最高のもので抗う。ヒトのパワーを、この言葉から感じるのはぼくだけではないはずだ。(以下、「BRUTUS TRIP 02」参照)
コンクリートで鉄筋構造、エレベーターを使って高層化を可能にしたビル群。こんな現象がアメリカで始まる1200年も前から、シバームでは高層化が始まっていた。それも、すべて日干しレンガで。強度、軽さともに高層化を支えるには十分な材料を使い、高さ30m、500近い高層建築が立ち並ぶ様は、「砂漠のマンハッタン」を地でいっている。
シバームだけではなく、首都サナアでは箱形でアラベスク模様が美しい「お菓子箱」のような光景が続くし、ワディ・ダハールでは岩をそのまま利用した建築物まであるという。もっとも目を引くのはワディ・ダワンのパステルカラーの建物。アラブという文化には似つかわしくない、そして、砂漠という風土にもピンと来ないギャップ。それがほんと素敵だなと思える。「色彩のパラダイス」なんて表現で紹介もされている。
イエメンといえばビンラディン?なんて連想も、もはや古く、でも拉致されたりもするからちょっと怖く、8年?9年前ぐらい前か、友人がイエメンに行って絵はがきを貰った。「モカで有名な国」と聞いて、ふ〜ん、っと言ったぼくに、「今はつくってないけど」なんて事が続いて、え、あっ、そうなんですか、、、と聞き返したことを思い出す。
今、やっと分かってきた。イエメンの、建築の魔力?というか魅力。
砂漠のマンハッタンとやらに、是非一度行きたいな。