田中達也さん、鈴木康広さんらTwitterなどSNSで作品を発表するアーティストたちの作品が、これだけずらっと並ぶと圧巻。小さな作品をのぞき込んで、思わずにっこりしたり、妙に納得したり。できそうで、できない、このアイデアの宝庫に感嘆しっぱなしの展覧会だ。
人間である自分のスケールを1として「ブロッコリー」を見たときは、食べ物だけど、自分のスケールをぐーんと縮めて、ブロッコリーを見たときには大木に見えたりする。そんな世界観にセンスがあふれているから素晴らしい。まず、横須賀美術館のエントランスを入ると、日本地図のベンチがある。息子は、手に持っていた新幹線かがやきのNゲージを東京から金沢までなぞる。そして、日本一周させる。そんなベンチはあるようでなかった。もっと目から鱗なのは、日本地図の方位磁石。水の上に浮かぶ「日本」が、有るべきの姿のママ北をさす作品は、見事だ。これら鈴木康広氏の作品は、色鉛筆を半々にして色を変えて地平線を描いてみたり、10分23秒の浮かんで消える映像作品に、なぜだかすごく吸い込まれたり。「水平線の消息ー鉛筆」「水平線の消息ーひも」、「日本列島の方位磁石」、「日本列島のベンチ」などなど。
田中達也氏は、「手足がもうパンパン」(重ねられたパン半斤?をロッククライミングする作品」や、「カミドメドンの発掘現場」「しばらくここで待ってクリップ」(カラフルなクリップのベンチ)、「水泳選手は目が超いい」「各国の名だたる虫歯達が集結」(入れ歯の中で会議する人達)、「着火オーライ」などなど。「スケールと見立ての関係」の作品をみながら、自分というスケールを自在に変えていく。
その他、野村仁の「アナレンマ」シリーズ、平松公の「京浜工業地帯の掟 磯子・横須賀隆起図」(この作品に囲まれて立った時の、あの感覚はなんとも不思議)、和の世界感(雪深い秋田の)を表現した高橋勝美氏、街のロゴを小さく写しだした岩崎貴宏氏、これぞミニチュア世界を表現した高田安規子・政子氏などなど、楽しい作品に囲まれて、ふと、最後に残ったのは、展覧会冒頭の月面の様子を書き記した国友一貫斎やロバート・フックのミクログラフィアだったりもする。天然雪と人工雪の結晶の違い(中谷宇吉郎氏)がぼんやりい浮かんだり、も。
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縮小/拡大する美術
センス・オブ・スケール展
@横須賀美術館
2019年4月28日(日)